• ･･･一体この男には、篠田と云う同窓の友がありまして、いつでもその口から、足下もし折があって北陸道を漫遊したら、泊から訳はない、小川の温泉へ行って、柏屋と云うのに泊ってみろ、於雪と云って、根津や、鶯谷では見られない、田舎には珍らしい、佳い女が居る･･･ 泉鏡花 「湯女の魂」

• ･･･　鶯谷へついたとき、人々はせき立って、窓から降りはじめた。男たちばかりが降りている。そのうちやっと、ドアが開いた。　出口に近づいて行ったら、反対の坐席の横の方から、若い女が、おろおろになって「あの、この辺にショール落ちていな･･･ 宮本百合子 「一刻」

出典：青空文庫

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