・・・土人の着る浅葱色の外套のような服で、裾の所がひっくり返っているのを見ると、羊の毛皮が裏に附けてある。窓の方へ背中を向けて頭を粟稈に埋めるようにしているが、その背中はぶるぶる慄えていると云うのだね。」 小川は杯を取り上げたり、置いたりして・・・ 森鴎外 「鼠坂」
・・・それへ引き越すとすぐに仲平は松島まで観風旅行をした。浅葱織色木綿の打裂羽織に裁附袴で、腰に銀拵えの大小を挿し、菅笠をかむり草鞋をはくという支度である。旅から帰ると、三十一になるお佐代さんがはじめて男子を生んだ。のちに「岡の小町」そっくりの美・・・ 森鴎外 「安井夫人」
・・・この土地で奴僕の締める浅葱の前掛を締めている。男は響の好い、節奏のはっきりしたデネマルク語で、もし靴が一足間違ってはいないかと問うた。 果して己は間違った靴を一足受け取っていた。男は自分の過を謝した。 その時己はこの男の名を問うたが・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
出典:青空文庫