・・・ 当時のロシア作家としては全く特殊なパリへの半移民的生活をもってツルゲーネフが一生を終るに至った動機は、抑々何であったのであろうか。 ツルゲーネフは、そのことに関し回想記の中でこう書いているそうである。「私は自分の憎むものと同じ空気・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・ヒットラー政権の下では、自由主義的な芸術家が国外へ追放され、政治的移民としてアムステルダムやパリに住み、世界文学史の上に前例のなかった移民文学を創造している。これらの人々は当然ヒューマニズムの立場にあるのであるが、更に注目すべきことは、ドイ・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムの諸相」
・・・ 題材的には数年前になかった変化があって、例えば大石千代子氏のブラジル移民を描いた小説、小山いと子氏の「オイル・シェール」のような題材のもの、川上喜久子氏の朝鮮を背景とした作品など出ている。そのほか多くの婦人作家たちが、満州、支那、南洋・・・ 宮本百合子 「拡がる視野」
・・・資本主義の国々では、ニューヨークでも、ロンドンでも、イースト・サイドといえば、西区の上流区域とはちがって労働者、外国移民、猶太人などの住む、より貧しいより生活の苦しい区画とされている。東京で麹町と江東地区との生活にちがいがあるとおりである。・・・ 宮本百合子 「婦人デーとひな祭」
・・・ 大石氏の題材は多く日本からの移民の生活が扱われているのだけれど、そして大陸開拓の文学というとき満州あたりの移民の生活が考えられているのだけれど、大陸文学というとき、内地の感覚で移民の生活が先ず浮ぶというところに、日本の文学における大陸・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
・・・植民地、移民地における芸術運動の問題。こういう重大な、根づよい活動と明確な世界観を必要とする課題は、全体の芸術運動の根がしっかり、それぞれ生産の場所にあるプロレタリア大衆の中へ張ってはじめて、階級的に、生き生きした綜合力で芸術化されて来るに・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・十八世紀の末に、清教徒が精神の自由を求めて新世界へ移住してきた封建的伝統を少くもった新興国である。移民した人々に対する英国の徴税とその君主支配に反対して独立戦争をおこして、勝利した。人類の理想、人道主義世界の擁護、平和の精神はアメリカ伝統の・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・そのおかげで、一九〇五年のかの日曜日の後、ペテロパヴロフスクの要塞監獄に投獄された彼が命を全うしてイタリーへ政治的移民として住むことが出来たのであった。 ほぼ二十五年に亙るレーニンとの友情が結ばれたのは一九〇七年のことであった。「母」を・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・この旅行の帰途ゴーリキイは政治的移民として、イタリーのカプリ島に行き、一九一三年ロマノフ王家三百年記念大赦令が出るまで八年間カプリに止ることになった。 イタリーでゴーリキイはレーニンによって高く評価された小説「母」を書き、「オクロフ町」・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
出典:青空文庫