・・・とか種々の委員会への分散的吸収にまかせざるを得なくなって、この夏、新体制の声とともに、婦選獲得同盟は十八年の苦闘の歴史を閉じて解消してしまったのであった。 婦選の動きが日本にあってはこのように見るも痛々しい浮沈をくりかえして、公民権さえ・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・ファシズムというものが、一つの組織された政治的圧力であるのに、それに抗すべき人民戦線が一般ヒューマニズム擁護というモットウにだけ解消されて、民主的な社会的政治的本質を抹殺して、一つの勢力として存在しえないことは自明です。日本における野蛮な抑・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・が獲得されなければならないのである。「モルプ」が、特に同伴者作家への働きかけを問題とし、ソヴェト同盟では「ラップ」が解消され目下綜合的で単一な作家団体のための組織委員会がもたれていることなどを引き合いに出し、プロレタリア文学における同伴・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・サークルが昔の悲劇をくりかえしたり、文化団体の独自な活動が組合の宣・教に解消され、「文学は政治に従属する、」という言葉の、しごく粗雑な理解が、民主主義文学運動をこんらんさせないものでもない。『文化革命』第二号をよんだひとは、この注目が、根拠・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・この主張は表面では過去の文学と文化の特権的性格を批判したものであったけれども、本質では文化・文学の理性、批判性、自立性を彼等のいわゆる素朴なる大衆の低度に解消してしまう方法でした。正月元日に明治神宮の参道をみたす大衆の中に、インテリゲンチャ・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・菊太の女房はこの上なしのだらしなしやで、針もろくに持てず、甲斐性のない女だと女中まで、くさいものが前に有る様な顔を仕て話してきかせる。「菊太爺さんもずるい爺様ですない。 いつもいつも、どうにかして無理を通して行く。御隠居様も今度・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・この間この組織が実質に於てより大規模な上述の諸組織に発展的解消をするに当って、最後の賞を尾崎一雄氏、川端康成氏に与えた。この賞に当っても、嘗て会員によって推薦された作品が、所謂左翼的立場に立つ作家によって書かれているものであるという理由で、・・・ 宮本百合子 「矛盾の一形態としての諸文化組織」
・・・三井、三菱、住友、安田の四大財閥が解消せられることになった。日本を破壊に導き、七千万の人口を限りない苦痛に陥入れている財閥が、解体せられるということは私達の心に、何となしこの社会も、公平に向いつつあるという希望を与えた。総ての新聞が、この処・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・あそこで大きな白熊がうろつき、ピングィン鳥が尻を据えて坐り、光って漂い歩く氷の宮殿のあたりに、昔話にありそうな海象が群がっている。あそこにまた昔話の磁石の山が、舟の釘を吸い寄せるように、探険家の心を始終引き付けている地極の秘密が眠っている。・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
出典:青空文庫