・・・は傑作だが、プロレタリア的観点から農民はああ見られただけではすまない。それを書けば、諷刺より極めて弁証法的に扱われたリアリズムの小説になってしまう。 諷刺文学はいわばプロレタリア文学の行動隊である。 形は小さいが、活々したモーメント・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・とはこの観点からわれわれに何を教えるであろうか。「幼き合唱」において作者は漁師の息子である小学校教師佐田のブルジョア教育に対する反抗を書いている。貧乏なばかりに師範の五年間を屈辱の中に過し、それをやっと「向学心」と「学問の光明」のために忍従・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・新しいひろい社会性の上に立ち、集団生活の中で大きくなって来ている彼等は、或る時、作者よりはズッと正確な革命的・階級的観点で、当時の民衆の歴史的役割を観る力をもちはじめている。 グラトコフのロマンチシズム、ピリニャークの傍観的な態度、それ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・歴史小説に於てより高い観点が要求されるとき制約のなかで最も留意すべきものはこの時間的及び空間的なものではあるまいか」と云われているのである。 同氏の「南海譚」を、作者のそのような歴史小説への意図をふくんで読み、三百年の昔朱印船にのって安・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・世界的諸関係の中に日本をおき、公の観点から洞察し、心から祖国を愛する者ならば、日本の民主化が如何に重大であるか、千万の言葉にまさる重さを理解しなければならない。 政党が、公のものであるならば、自党の得票という私的目的のために、日本人民の・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・の中で、悲しい兄弟よ、と歎息した作者の心情は、その後永い歳月と波瀾を経て、社会史的な観点と未来の幸福の建設の具体的な方向とをつかむようになって来ている。この作品の背景となった農村の生活は、その後、作者の生活の大きな曲り角の一つ一つに、背景と・・・ 宮本百合子 「作者の言葉(『貧しき人々の群』)」
・・・という文章の中でも、くりかえし上にのべた観点を主張しておられる。そして、今日の機構がしからしめている「特許」というものの性質が反科学的であることにふれ、「幸にして、純粋の科学の世界には、このような資本主義の弊害はさほど及ぼして来ていない」云・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・ 警視庁の役人は、「人権がどうのということなしにむしろ自己の権利を守るという明るい観点から協力してもらいたい、」と語っている。万一あなたの身に不慮のことがあったとき、指紋さえあれば、すぐあなたの身元がわかりますから、と云われて、うれしい・・・ 宮本百合子 「指紋」
・・・ けれども、今日みれば、リアリスティックな厚みと素朴な熱誠がその作品のネウチで、農村と農民の生活はどこまでも、幼い人道主義的観点から描かれている。農村の窮乏の資本主義による経済的背景、階級としての農民などという認識は、どこにもない。つま・・・ 宮本百合子 「「処女作」より前の処女作」
・・・ 田舎新聞 ○「寒天益々低落 おい大変だぜ 寒天下落だよ 中央蚕糸 紅怨 紫恨 ◇二度の左褄 上諏訪二業 歌舞伎家ではさきに 宗之助 初代福助の菊五郎の二人が古巣恋しくて舞戻ったが、・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
出典:青空文庫