・・・真実われら働く者の味方となり、わたしらが読みたい雑誌を発行し、観たい芝居を上演し、講演会を催し、プロレタリア・農民の文化を高めようとする日本プロレタリア文化連盟から大衆を切りはなし、飢餓と戦争とを合理化するブルジョア・地主の反動文化へつき落・・・ 宮本百合子 「日本プロレタリア文化連盟『働く婦人』を守れ!」
・・・日本の敗戦がこういう社会経済事情をもたらしたから、いわゆる性的失業者、半失業者がふえて一種の性的飢餓の心理がある。だから両性関係は混乱するのはさけがたいとされる見かたがある。その同じ理由からエロチックな中間小説が氾濫するといわれてもいるが、・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・失業、農村の飢餓に苦しむ大衆の革命力の深刻な高揚とそれに対する支配階級の恐怖は、プロレタリア文化団体に対してのうちつづく暴圧、白テロにまざまざと反映している。世界の情勢は革命的作家に実に多くの任務を負わせ、実践を必要としている。列強ブルジョ・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・―― ところが、カザンへ着いてゴーリキイがそこに見出したのは大学への道ではなくて、早速の飢餓であった。善良なエフレイノフと更に勉強だけに没頭している弟とには、貧しい恩給暮しの母親が、どんなからくりをして、息子二人と、どこの誰ともはっきり・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ ゴーリキイ自身の精神的飢餓と当時のロシア労働者の一部がインテリゲンツィアに対して抱いている辛辣な敵意が彼を苦しめた。その頃ゴーリキイはもちろん、労働者とインテリゲンツィアの対立を政治的に利用するために、どんな金を政府が撒いているかなど・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・ それからは三人が摂津国屋を出て、木賃宿に起臥することになった。もうどこをさして往って見ようと云う所もないので、只已むに勝る位の考で、神仏の加護を念じながら、日ごとに市中を徘徊していた。 そのうち大阪に咳逆が流行して、木賃宿も咳をす・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
・・・魂の饑餓と欲求とは聖い光を下界に取りおろさないではやまない。人生の偉大と豊饒とは畢竟心貧しき者の上に恵まれるでしょう。悩める者、貧しき者は福なるかな。私は自分の貧しさに嘆く人々が一日も早く精神の王国の内に、偉大なる英雄たちの築いたあの王国の・・・ 和辻哲郎 「ある思想家の手紙」
出典:青空文庫