・・・これは暫時細君を交易することなり。 孔子様は世の風俗の衰うるを患て『春秋』を著し、夷狄だの中華だのと、やかましく人をほめたり、そしりたりせられしなれども、細君の交易はさまで心配にもならざりしや、そしらぬ顔にてこれをとがめず。我々どもの考・・・ 福沢諭吉 「中津留別の書」
・・・また或は各地の固有に有余不足あらんには互にこれを交易するも可なり。すなわち天与の恩恵にして、耕して食い、製造して用い、交易して便利を達す。人生の所望この外にあるべからず。なんぞ必ずしも区々たる人為の国を分て人為の境界を定むることを須いんや。・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・その点は実に公益である。本官に於て大いに同情を呈する。しかしながらすでに妄りに人の居ない座敷の中に出現して、箒の音を発した為に、その音に愕ろいて一寸のぞいて見た子供が気絶をしたとなれば、これは明らかな出現罪である。依って今日より七日間当ムム・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・ジイドの考えによれば「人の最も個性的な状態にいることは、なによりも優れた公益をはかっていることになるのだ」が、資本主義ヨーロッパの社会的現実は、果して、人間を個性的に、真の自分たらしめ得ているであろうか。ジイドが目撃する古い社会には「甲殼類・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・イツが第一次大戦終結の後一九一九年ヴェルサイユ条約成立と年を同じくして、新憲法による男女二十歳以上の一般、平等、直接、無記名投票権を認めていること、および、ソヴェト・ロシアが一九一七年十一月以来生産的公益的労働によって生計を営む十八歳以上の・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・モラトリアム発表前の十六日、正金銀行で、課長以上の行員たちが殆ど全部現金を五円札に代え、前交易営団総務課長は、二十万円の金を五円札で引き出したという事実である。おそらく、現にその手で事務を取らざるを得なかった同じ銀行の者が、その投書をかいて・・・ 宮本百合子 「人間の道義」
・・・「世界各国の放送事業中最も公益的色彩を濃厚にするものであり、従ってその具体的表現としてのプログラムも特異の存在を示している。我が番組編成の指導方針は事業創始当初より一貫して神ながらの我が国民精神の涵養を基調とし日本文化の普遍と向上を期するに・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
出典:青空文庫