一「武蔵野の俤は今わずかに入間郡に残れり」と自分は文政年間にできた地図で見たことがある。そしてその地図に入間郡「小手指原久米川は古戦場なり太平記元弘三年五月十一日源平小手指原にて戦うこと一日がうちに三十余た・・・ 国木田独歩 「武蔵野」
一「武蔵野の俤は今わずかに入間郡に残れり」と自分は文政年間にできた地図で見たことがある。そしてその地図に入間郡「小手指原久米川は古戦場なり太平記元弘三年五月十一日源平小手指原にて戦うこと一日がうちに三十余た・・・ 国木田独歩 「武蔵野」
・・・私はお小手をとるつもりで、そう言ってやった。「何を言ってやがる。頭が悪いなあ。そんなことで、おさえた気でいやがる。それだから、大人はいやなんだ。僕は君に、親切で教えてやっているんじゃないか。先輩としての利己主義を、暗黙のうちに正義に化す・・・ 太宰治 「乞食学生」
・・・私はお小手をとるつもりで、そう言ってやった。「何を言ってやがる。頭が悪いなあ。そんなことで、おさえた気でいやがる。それだから、大人はいやなんだ。僕は君に、親切で教えてやっているんじゃないか。先輩としての利己主義を、暗黙のうちに正義に化す・・・ 太宰治 「乞食学生」
・・・例えば、剣道の試合のとき、撃つところは、お面、お胴、お小手、ときまっている筈なのに、おまえたちは、試合も生活も一緒くたにして、道具はずれの二の腕や向う脛を、力一杯にひっぱたく。それで勝ったと思っているのだから、キタナクテね。」 ・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・例えば、剣道の試合のとき、撃つところは、お面、お胴、お小手、ときまっている筈なのに、おまえたちは、試合も生活も一緒くたにして、道具はずれの二の腕や向う脛を、力一杯にひっぱたく。それで勝ったと思っているのだから、キタナクテね。」 ・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・焼小手で脳味噌をじゅっと焚かれたような心持だと手紙に書いてあるよ」「妙な事があるものだな」手紙の文句まで引用されると是非共信じなければならぬようになる。何となく物騒な気合である。この時津田君がもしワッとでも叫んだら余はきっと飛び上ったに・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
・・・焼小手で脳味噌をじゅっと焚かれたような心持だと手紙に書いてあるよ」「妙な事があるものだな」手紙の文句まで引用されると是非共信じなければならぬようになる。何となく物騒な気合である。この時津田君がもしワッとでも叫んだら余はきっと飛び上ったに・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
・・・すると、その、ちょいと、小手を取ったんだあね」「ふうん。とうとう小手を取られたのかい」「とうとう小手を取られたんだあね。ちょいと小手を取ったんだが、そこがそら、竹刀を落したものだから、どうにも、こうにもしようがないやあね」「ふう・・・ 夏目漱石 「二百十日」
・・・すると、その、ちょいと、小手を取ったんだあね」「ふうん。とうとう小手を取られたのかい」「とうとう小手を取られたんだあね。ちょいと小手を取ったんだが、そこがそら、竹刀を落したものだから、どうにも、こうにもしようがないやあね」「ふう・・・ 夏目漱石 「二百十日」
出典:青空文庫