・・・出歩いたことのない水臭い仲で、お互いよくよく毛嫌いして、それでもたまに大将が御寮人さんに肩を揉ませると、御寮人さんは大将のうしろで拳骨を振り舞わし、前で見ている女子衆を存分に笑わせた揚句、御亭主の頭をごつんと叩いたりして、それが切っ掛けでま・・・ 織田作之助 「大阪発見」
・・・ どの顔にも元気がない。 組合が厳存していた時代の元気が、からきしなくなってしまっている。それに、西山が驚いたのは、彼等の興味が、他へ動いていることだ。 ごつ/\した、几帳面な藤井先生までが、野球フワンとなっていた。慶応贔屓で、・・・ 黒島伝治 「鍬と鎌の五月」
・・・おしかはランプにまで腹立てゝいるようにそう云った。「もう石油はないんか!」「あるもんら! 貧乏したら石油まで早よ無うなる。」おしかはごつ/\云った。「そんなか、カワラケを持って来い。」「ヘイ、ヘイ。」おしかは神棚から土器をお・・・ 黒島伝治 「老夫婦」
・・・ 一つの電気の下に集まって、毛脛をあぐらかいて、骨ごつな指を、ギゴチなく一イ、フウ、三イ、とたどらせて行く父親をかこむ子供達が、その強張った指と、時々思い出した様に、ジーブッ、ブーブーと響く音とから、大奇籍(でも現れ出そうな眼差しで、二・・・ 宮本百合子 「二十三番地」
出典:青空文庫