・・・動物の中の原生動物と植物の中の細菌類とは殆んど相密接せるものである。又動物の中にだってヒドラや珊瑚類のように植物に似たやつもあれば植物の中にだって食虫植物もある、睡眠を摂る植物もある、睡る植物などは毎晩邪魔して睡らせないと枯れてしまう、食虫・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・却って、最近悪化して来ている。いくら、待遇改善しても、月給は物価に追いつく時は決してない。これがインフレーションの特徴である。めいめいの財布は空となって、遂にほうり出されている形である。闇の循環で、細々生きているような生命の扱いかたをどんな・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・トでは、僧侶が人の病をいやす役目もはたしていたという文明の発端から、人類の医療の父として語られるヒポクラテスの話におよびさらに、ウィリアム・ハーヴェーの血液循環の発見があり、やがてパストゥールによって細菌が発見されたのも、ジェンナーの種痘の・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・すなわち、結核に対する人間の新しい態度――より科学的により社会的に、人間を不幸にするこの細菌は退治られなければならないという態度をめやすとしていいと思う。気分や、雰囲気から描かれているばかりでなく。―― 「白い激流」 伊東千代子・・・ 宮本百合子 「『健康会議』創作選評」
・・・生物学者である天皇が細菌戦に特別命令を与えたという事実が明らかになったことは、あらゆる人を深く考えさせる。その沈潜するこころもちをまぎらすように、わやわやとした声でかつて軍部に扈従して政治や文学を語った作家が、こんどは、軍事基地施設を拒むこ・・・ 宮本百合子 「五月のことば」
・・・られた人々は、今猶上に引いた序文の言葉の魔術や、八方からの反撃にかかわらずジイドが飽くまで真理を追究しようとしている態度という架想に陥って、人類の文学の今日の多難な道の上にこの小冊子の著者が撒いている細菌の本質を観破せず、或は、観破せざるが・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・第二次大戦では、毒ガスの使用その他細菌戦を行わないことが申しあわされたが、思いがけない原子爆弾が出現した。それから原子兵器は、現世紀の悪夢となった。国際政治に対して、あらゆる国の人民が重大な関心をむけ、原子兵器使用禁止のために集団的に発言し・・・ 宮本百合子 「「人間関係方面の成果」」
・・・現実の人間の苦痛と不幸に面して、パストウルは科学者としての要求から着実に次から次へと害悪を及ぼす細菌との具体的な、日常に即した闘争を行い、その途上での障害に対しては驚くべき不屈を示した。映画として観れば、細部に納得の行かぬ点、あまり好都合過・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・この委員会は、細菌兵器も禁止すべきではないとしている。味方の手には、あらゆる殺戮の武器を与えようとするこの種の平和運動者を指弾するらいてう氏の警告にはこのようにして事実の裏づけが見出されるのである。きょうの現実の間で「二つの世界」をいうなら・・・ 宮本百合子 「平和の願いは厳粛である」
・・・これはペツテンコオフエルが疫癘学、コツホが細菌学を倒すに足りぬべし。また恙の虫の事語りていわく、博士なにがしは或るとき見に来しが何のしいだしたることもなかりき、かかることは処の医こそ熟く知りたれ。何某という軍医、恙の虫の論に図など添えて県庁・・・ 森鴎外 「みちの記」
出典:青空文庫