・・・又動物の中にだってヒドラや珊瑚類のように植物に似たやつもあれば植物の中にだって食虫植物もある、睡眠を摂る植物もある、睡る植物などは毎晩邪魔して睡らせないと枯れてしまう、食虫植物には小鳥を捕るのもあり人間を殺すやつさえあるぞ。殊にバクテリアな・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・産前二ヵ月、産後二ヵ月、有給休暇をとります。そして居住地域の産院、母子健康相談所が、若い母と子との健康のために助力します。これは、工場や官庁に働く婦人、女教師などに大体同じ事情です。婦人と職業、結婚、家庭生活の問題は、いまの日本ですべての若・・・ 宮本百合子 「生きるための協力者」
・・・ その頃大変流行った、前髪を切下げた束髪にして、真赤な珊瑚の大きな簪を差した友子さんは、紅をつけた唇を曲げながら、「貴女はどうお思いになって?」と、政子さんの返事を求めました。 子供の時から、姉妹のように暮している政子さんと・・・ 宮本百合子 「いとこ同志」
・・・なかのものがその辺にとりちらされ、鼈甲のしんに珊瑚の入った花の簪が早朝の黒い土に落ちて、濡れていた。 一番終りのときは、弟二人が大きくなっていた。上の弟が夜あけに不図目をあけたら、足許の戸棚のところに何か黒いものが見えたので、何の気なし・・・ 宮本百合子 「からたち」
・・・勿論女も男と同じ労働に対しては同一の賃銀で、産前産後四ヵ月の有給休暇を貰う。無料の産院がある。そして、昔はブルジョアや貴族がもっていた別荘を、今は労働組合の「休養の家」として、そこへ休暇にゆく。「では、何故ソヴェト同盟において、労働者はかく・・・ 宮本百合子 「共産党公判を傍聴して」
・・・母は出産のむずかしいたちで、いつも産後は難儀した。赤坊の世話は自分で出来ないで看護婦がした。その看護婦は離れた室にいることだし、商売になれすぎてもいて、夜なかにし少し赤坊が泣くぐらいのことでは、なかなか目をさまさない。それが母の心配になるの・・・ 宮本百合子 「時代と人々」
・・・ ミーチャの母さんは、労働婦人は、産前産後四ヵ月の給料つき休暇の貰えること、赤坊の仕度金と九ヵ月の特別哺育費が国庫から支出されること、産院が無料であることなどを、その簡単な言葉の中で、タマーラに思い出させたのだ。 タマーラは何とも云・・・ 宮本百合子 「楽しいソヴェトの子供」
・・・親の寝た間に山を出で城の門まで来は来たが赤い木の実は見えもせず路は分らず日は暮れる長い廊下のまどの下何やら赤いものがある、そっとしのむで来て見ればこは姫君のかんざしか珊瑚の玉か恥かしやたべてよいやら悪い・・・ 宮本百合子 「旅人(一幕)」
・・・ 海にある通りの珊瑚が、碧い水底に立派な宮殿を作り、その真中に、真珠のようなたくさんの泡に守られた、小さな小さな人魚が、紫色の髪をさやさやと坐っています。 なんという綺麗なのでしょう。ユーラスは、すっかりびっくりしてしまいました。今・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・ 私みたいに珊瑚の粉や瑪瑙のまぼしい様な色をお友達にして居る人間はやっぱりその方がすきですよ。 そして又その方がする仕事につり合った気持だもの。 こんな事を云いながら美くしい濃い芸を見せると云って京子は散々に松蔦をほめちぎっ・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
出典:青空文庫