・・・この映画の傾向を次第に発展させて行けば結局は日本固有の俳諧連句を視覚化したようなものに近づいて行くであろうと思う。私は日本の一流の映画家、音楽家、俳人が力を合わせて、西洋人に先鞭をつけられないうちに、一日も早くオリジナルで芸術的でしかも大衆・・・ 寺田寅彦 「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」
・・・書物で読んだことだが、樫鳥や山鳩や山鴫のような鳥類が目にも止まらぬような急速度で錯雑した樹枝の間を縫うて飛んで行くのに、決して一枚の木の葉にも翼を触れるような事はない、これは鳥の目の調節の速さと、その視覚に応じて反射的に行なわれる羽翼の筋肉・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
・・・これは鳥の眼の調節の速さと、その視覚に応じて反射的に行われる羽翼の筋肉の機制の敏活を物語るものである。もし吾々人間にこの半分の能力があれば、銀座の四つ角で自動車電車の行き違う間を、巡査やシグナルの助けを借りずとも自由自在に通過することが出来・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・これに反して遠方から見る場合にはもはやふり仰いで見る心持はなくなって、眼とほぼ同水平面にある視角の小さな物体を見ることになるので、それで上下と左右の比率が正しく認識されるのではないかというのである。この解釈は間違っているかもしれないが、しか・・・ 寺田寅彦 「観点と距離」
・・・鳥の大きさが仮定できれば単に仰角と鳥の身長の視角を測るだけで高さがわかるし、ストップ・ウォッチ一つあればだいたいのテンポはわかる。熱心な野鳥研究家のうちにもしこの実測を試みる人があれば、その結果は自分の仮説などはどうなろうとも、それとは無関・・・ 寺田寅彦 「疑問と空想」
・・・ 十五 視角 はじめて飛行機に乗った経験を話している人が、空中から見た列車の長さがたったこれだけのひものようにしか見えなかったと言ってさし出した両手の間に約一尺ぐらいの長さを画して見せた。これは機上から見た列車の全長・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・しかし山頂から視角にしてほぼ十度ぐらいから以上の空はよく晴れていたから、今に噴煙の頭が出現するだろうと思ってしばらく注意して見守っていると、まもなく特徴ある花甘藍形の噴煙の円頂が山をおおう雲帽の上にもくもくと沸き上がって、それが見る見る威勢・・・ 寺田寅彦 「小爆発二件」
・・・ とんびの滑翔する高さは通例どのくらいであるか知らないが、目測した視角と、鳥のおおよその身長から判断して百メートル二百メートルの程度ではないかと思われる。そんな高さからでもこの鳥の目は地上のねずみをねずみとして判別するのだという在来の説・・・ 寺田寅彦 「とんびと油揚」
・・・その水平経路の視角はせいぜい二三十度でその角速度は、どうもはっきりはしないが、約半秒程度の時間に上記の二三十度を通過したものらしい。 二人の目撃者の相互の位置は一間ほど離れており、また椅子の向きも少しちがっていたので、私は二人の各位置に・・・ 寺田寅彦 「人魂の一つの場合」
・・・その人たちとしては一応もっともな議論ではあろうが、ただの科学者から見るとごくごく狭い自分勝手な視角から見た管見的科学論としか思われない。 科学者の科学研究欲には理屈を超越した本能的なものがあるように自分には思われる。 蜜蜂が蜜を集め・・・ 寺田寅彦 「藤棚の陰から」
出典:青空文庫