・・・ 作者は姉の家に手伝っている間にも、「いろいろ焦り、自分の書けないことが、まるで姉たちの所為でもあるかのように毎日当りちらし、ヒステリーのように泣いてばかりいるのだった。」 そのような自分の焦燥の姿をも認めながら、それをひっくるめて・・・ 宮本百合子 「見落されている急所」
・・・切れならずや、それに大金を棄てんこと存じも寄らず、主君御自身にてせり合われ候わば、臣下として諫め止め申すべき儀なり、たとい主君がしいて本木を手に入れたく思召されんとも、それを遂げさせ申す事、阿諛便佞の所為なるべしと申候。当時三十一歳の某、こ・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書」
・・・の切れならずや、それに大金を棄てんこと存じも寄らず、主君御自身にてせり合われ候わば、臣下として諫め止め申すべき儀なり、たとい主君がしいて本木を手に入れたく思召されんとも、それを遂げさせ申す事阿諛便佞の所為なるべしと申候。当時未だ三十歳に相成・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書(初稿)」
・・・続いて、上を偽る横着物の所為ではないかと思議した。それから一応の処置を考えた。太郎兵衛は明日の夕方までさらすことになっている。刑を執行するまでには、まだ時がある。それまでに願書を受理しようとも、すまいとも、同役に相談し、上役に伺うこともでき・・・ 森鴎外 「最後の一句」
出典:青空文庫