・・・亮子という溌剌として生来の生活力を豊富に蔵した若い女を通じて、きまりきった「三方に仕切った舞台のような」枠の内での生活に対する本能的な嫌悪を語っている。又、彼女の兄である小説家伴三の作家的日暮しの姿を批判して「小説ってそんなものかしら」「兄・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・ 芸への愛好を伴う現実批判の衰退は随筆の流行をも招来した。内田百間の「百鬼園随筆」を筆頭として諸家の随筆が売り出されたが、これは寧ろ当時の文学の衰弱的徴候として後代は着目する性質のものなのである。 三 ・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・のぞましい社会の招来のために、その建設の方へ一歩一歩と前進の旅をつづけなければならない。そこに新しい世代の詩があり、歌があり、文学があり、また行進曲があるのだと思う。 文学は何か現実生活とはなれたもののように考えられている習慣があったけ・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・に書かれているまでのアグネス・スメドレーは、不屈な闘志と生来の潔白な人間的欲求と共に熱病的な矛盾と自然発生的な手さぐりな、しかし熱烈な生きかたとを展開しているのである。「女一人大地を行く」が書かれてから既に十年近い月日が経った。スメドレ・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・そして、重い封建の石をわたし達の肩からふりすて、日本の明るい民主的社会を招来させ、もう二度と戦争のない、生活の安定と向上との約束された未来を、わたし達のものとしましょう。婦人民主クラブはあらゆる層の婦人がうれしさも努力も向上心も互にわけ合っ・・・ 宮本百合子 「婦人民主クラブについて」
・・・ 従来文学が中央へばかり集ってしかもそこで類型化し衰弱しているように見える昨今、文学の地方分散の情勢が招来されつつあることは、朝鮮・満州などの文学的動勢に対する中央の文壇の関心を見ても、九州文学、関西文学などの活溌さを見ても、将来の文学・・・ 宮本百合子 「文学と地方性」
・・・とは、社会主義社会招来のために闘うプロレタリア・農民大衆の文化的要求と目的とによって、厳しくふるいわけられた。 ソヴェト同盟をのぞく世界じゅうのプロレタリア大衆は、めいめい本国、植民地の職場で、賃銀引下げ、労働強化に反対し、ストライキし・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・裏の松林からときどき松籟が聞こえた。雑草の蔭に濃い紫菫が咲いていた。 見積りも面倒なく済んで、地形にとりかかった。石川の経験ではすらりと進み過ぎたくらいの仕事であった。実を云えば、見積書をもって行って手金を受取るまで、石川は大して当にし・・・ 宮本百合子 「牡丹」
・・・そして、息苦しい室内に集って真理を擁護しながら議論をわき立たせるこれら一団の人々が、よりよい人間の生活の招来のために献身していること、彼等の言葉の中には彼の無言の思いも響いていることを感じ「自由を約束された囚人のような狂喜で」これらの人々に・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・そして、息苦しい室内に集って真理を擁護しながら議論をわき立たせるこれら一団の人々が、よりよい人間の生活の招来のために献身していること、彼等の言葉の中には彼の無言の思いも響いていることを感じ、自由を約束された囚人のような狂喜でこれらの人々に対・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
出典:青空文庫