・・・四六書院より戯曲集『女人哀詞』を出版。『風』なお継続。三月末完結の予定。」その後、「女の一生」「真実一路」につづいて目下「路傍の石」が東西両朝日新聞に連載中である。 さて、この自伝の概略から、読者はどういう感銘を得るであろう。ここには、・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・光尚はじきに逢おうと言って、権右衛門を書院の庭に廻らせた。 ちょうど卯の花の真っ白に咲いている垣の間に、小さい枝折戸のあるのをあけてはいって、権右衛門は芝生の上に突居た。光尚が見て、「手を負ったな、一段骨折りであった」と声をかけた。黒羽・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・西町奉行所の白州ははればれしい光景を呈している。書院には両奉行が列座する。奥まった所には別席を設けて、表向きの出座ではないが、城代が取り調べの模様をよそながら見に来ている。縁側には取り調べを命ぜられた与力が、書役を従えて着座する。 同心・・・ 森鴎外 「最後の一句」
出典:青空文庫