・・・本的に解放するキイ・ポイントがどこにあるかということについては、実に信じられないほど僅かしか知らず、漠然としかしらず、しかもその僅少な理解と漠然たる翹望は、今日、ちっとも民主的でもないし、正直でもない政権の頑迷執拗なねばり存続によって、けが・・・ 宮本百合子 「誰のために」
・・・そのものが地上にふかく舞い下りて、地の塩とならないにしても、その刺戟から更に新鮮な機運がわき出て、一九三三年ごろエリカ・マンがナチス政権のもとで組織していた「ペッパーミル」に似た演劇団が生れるかもしれない、そういうところへまで思いをはせれば・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・更に出版権にからまる絶え間ない訴訟事件があり、代議士立候補のための、進んでは大臣になるための政見を発表し、しかも時々バルザックは一八二五年の破局にもこりず熱病にかかったように大仕掛の企業欲にとりつかれ、サルジニアの銀鉱採掘事業や、或る地勢を・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・だから五年後に家康が政権を握ったときには、彼は、秀吉が征明の役を起こした時と同じ年齢であったが、秀吉とは全然逆に、学問の奨励をもっておのれの時代を始めたのである。慶長四年の『孔子家語』、『六韜三略』の印行を初めとして、その後連年、『貞観政要・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・彼らはこの集団の力によって政権を握り、その権力によって各自の私利をはかろうとする。しかし政治はかくのごときものであってはならない。明治大帝の詔にいう、「官武一途庶民に至るまで、各々そのこころざしを遂げ、人心をして倦まざらしめんことを要す」と・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫