・・・ 主人公の持つ方向と、作者の意企とは、それらの作品とむしろ対蹠的なものである。然し作品として見れば失敗の部に属すものとなっている要因を、その社会的根源にまで遡って見ると、私は、歴史的にはそれが「白夜」や「友情」その他の作家たちを今日あら・・・ 宮本百合子 「文学における古いもの・新しいもの」
・・・│ └────────────────────┘ 大書した、一九三一年の「ナップ」指導的スローガンがみんなの頭の上からさがっている。 六十五人の同盟員と三百人近い傍聴者とは、ギッシリ観客席を埋め、手に手に二十八頁の議事録をひろ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ とかく女が狭い生活にとじこめられていたために、人生の視野がせばまって、我執だの偏執だのが女につきものの気質のように見られた一方の、その対蹠的な要求とでもいうべきものだったのかもしれない。やきもちをやかないこと、そして物わかりのよいこと・・・ 宮本百合子 「ものわかりよさ」
・・・箱根の温泉宿で、これら二人の女に対蹠する気質の清子が現れたところで、私たちは作者の死とともに作品の発展と完結とを奪われたのである。「明暗」においても、漱石は女が結婚すると人間として悪くなる、少くとも素直でなくなり、品性がよくなくなるとい・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
・・・恋愛を夫婦愛の中核として見て、その発展と成熟との間におこる種々の問題こそ研究さるべきであるという常識は、日本の、現在でもなお結婚と恋愛とを切りはなして考える慣習と対蹠をなしている。 昔の日本人は、封建の柵にはばまれて、心に思う人と、親の・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫