・・・インテリゲンツィアがナチスの独裁へ反抗を示すことは、とりも直さず日本のなかで益々独裁を強化して来た絶対主義体制への抗議を意味したのであった。こうして、人民戦線の提唱のとき、もう近代の民主的主張をひっこめて、非政治的に、非社会的にそれを提案し・・・ 宮本百合子 「誰のために」
・・・それらを可能にしている資本主義体制と闘うのは、歴史の必然の力であります。支配階級が彼等の利益と権力とを擁護するためにこしらえている法律に、われわれ働くものの意志は反映していない。そこには抑圧し、無力にさせようと欲するものの意志があるだけです・・・ 宮本百合子 「同志たちは無罪なのです」
・・・大浦の祭壇や聖像は生花の束で飾られて居たが、この宏い大聖壇を埋めるに充分な花は得難いと見え、厚紙細工の棕櫚らしいものが、大花瓶に立ててある。この大会堂に信者が溢れて、復活祭でも行われる時は壮観であろう。然し私の好みを云うなら、自分は大浦の、・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・京都生れの武士であった近松は、当時崩れゆく武家の経済事情に押し流されて、いくつかの主家を転々した末は浪人して、歌舞伎の大成期であったその時代から辛苦の多い劇作家の生活に入った。芭蕉よりは十歳以上若い彼は、やはり同じ時代の芸術家らしい現実的、・・・ 宮本百合子 「芭蕉について」
・・・借金をしてまでの大望が娘によって裏切られた落胆についても、母はそれを率直にありのままは話さず、娘の大成のためには金銭をおしまず、堅忍をもって耐える母という風に道徳化して語った。それが又私の心に体の震えるような憎悪を呼び起すのであった。そうい・・・ 宮本百合子 「母」
・・・然し、現代の高度な資本主義の社会観の発展と地球六分の一をしめる社会主義体制との摩擦は、自ら異った容貌で、新興勢力の裡にふくまれている強大な可能性を歪曲しつつあるのであるまいか。 エンゲルスがマーガレット・ハークネスに送った手紙に「作・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・まして、自由党以下共産党以外の政党は、日本の旧体制の支持者であるとき、婦人代議士ばかりが、民主的であることが出来ようか。「女は女で」――投票はそれで集められたろうけれども、政治の実際に当って、例えば五人の自由党婦人代議士が自由党の立場にどれ・・・ 宮本百合子 「春遠し」
・・・ 自由党が禁圧せられ、国会開設が決定され、今日殆ど総ての作家によって理解されている日本の資本主義の特徴ある性質が組織化されてはっきり正面に押し出されて来ると同時に、文筆、言論の文化的分野には、この胎生期の奔放、自由が失われた。今日ごく手・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・ 聴取者は生きている あちらこちらでラジオのことが考えられている様子で、十二月号の『中央公論』に宮原誠一氏が「放送新体制への要望」という文章をかいていられる。 筆者の閲歴などについて全然知らないから、その文・・・ 宮本百合子 「ラジオ時評」
はしがき一、現在のソ同盟の労働者・農民の生活二、ソヴェト同盟の兄弟たちは、どんな闘争を通じて勝利を得たのか三、ソヴェト同盟の国家体制と日本の国家体制 はしがき 去る九月十八・・・ 宮本百合子 「労働者農民の国家とブルジョア地主の国家」
出典:青空文庫