・・・『若菜集』におけるあの婉やかな曲線的表現は、「常盤樹」に来て、非常に直線的な格調をもちはじめた。用語も、和文脈から漢詩の様式を思い浮ばせる形式に推移して来る。「常盤樹」にしろさらに「鼠をあわれむ」「炉辺雑興」「労働雑詠」等に到って、この・・・ 宮本百合子 「藤村の文学にうつる自然」
・・・『若菜集』におけるあの婉やかな曲線的表現は、「常盤樹」に来て、非常に直線的な格調をもちはじめた。用語も、和文脈から漢詩の様式を思い浮ばせる形式に推移して来る。「常盤樹」にしろさらに「鼠をあわれむ」「炉辺雑興」「労働雑詠」等に到って、この・・・ 宮本百合子 「藤村の文学にうつる自然」
・・・ 二人の女君は後室の妹君の娘達、二親に分れてからはこの年老いた伯母君を杖より柱よりたよって来て居られるもの、姉君を常盤の君、若やいだ名にもにず、見にくい姿で年は二十ほど、「『誘う水あらば』って云うのはあの方だ」とは口さがない召使のかげ口・・・ 宮本百合子 「錦木」
・・・ 二人の女君は後室の妹君の娘達、二親に分れてからはこの年老いた伯母君を杖より柱よりたよって来て居られるもの、姉君を常盤の君、若やいだ名にもにず、見にくい姿で年は二十ほど、「『誘う水あらば』って云うのはあの方だ」とは口さがない召使のかげ口・・・ 宮本百合子 「錦木」
・・・これは東京に輸入せられないうちに、小倉へ西洋から輸入せられている二つの風俗の一つである。常磐橋の袂に円い柱が立っている。これに広告を貼り附けるのである。赤や青や黄な紙に、大きい文字だの、あらい筆使いの画だのを書いて、新らしく開けた店の広告、・・・ 森鴎外 「独身」
・・・石田は馬に蹄鉄を打たせに遣ったので、司令部から引掛に、紫川の左岸の狭い道を常磐橋の方へ歩いていると、戦役以来心安くしていた中野という男に逢った。中野の方から声を掛ける。「おい。今日は徒歩かい。」「うむ。鉄を打ちに遣ったのだ。君はどう・・・ 森鴎外 「鶏」
・・・やがてその新芽がだんだん延びて、常磐樹らしく落ちついた、光沢のある新緑の葉を展開し終えるころには、落葉樹の若葉は深い緑色に落ちついて、もう色の動きを見せなくなる。そうなるともうすぐに五月雨の季節である。栗の花や椎の花が黄金色に輝いて人目をひ・・・ 和辻哲郎 「京の四季」
・・・来会者は井上、元良、中島、狩野、姉崎、常盤、中島、戸川、茨木、八田、大島、宮森、得能、紀平の諸氏であったという。これらの中の一番若い人でも大学生から見ると先生だったのであるから、こういう出来事はすべて別世界のことであって、わたくしたちには知・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
・・・来会者は井上、元良、中島、狩野、姉崎、常盤、中島、戸川、茨木、八田、大島、宮森、得能、紀平の諸氏であったという。これらの中の一番若い人でも大学生から見ると先生だったのであるから、こういう出来事はすべて別世界のことであって、わたくしたちには知・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
出典:青空文庫