・・・ 今も雨をついてローカルが通った。八分どおりは満員だが、窓ガラスの中は比較的閑静で車室に人の立つあきはある。これはすいている と思って見ていると、やはりステップに立ってつかまっている人々がかなりある。しかも最後の車台が通りすぎようとした・・・ 宮本百合子 「無題(十二)」
・・・わたくしあなたに八分通り迷っていましたもんですから。男。えええ。なーんーでーすーと。貴夫人。ええ。全くでございましたの。男あのあなたがわたくしに。貴夫人。ですけれど本当に迷っていたと申すのではございませんよ。八分・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「辻馬車」
出典:青空文庫