・・・活々として初々しい理性の発芽を、いきなり霜枯れさせた点である。今日、聰明で、誠実な若い世代は、自身の世代が蒙った損傷をとりかえそうとして苦闘しているのである。 その努力の一つの表現として、自分たちの新聞一枚も出そうとしている人々に対して・・・ 宮本百合子 「信義について」
・・・このことは、やがて、リアクションとして、一部に極端な文化文学上の経済主義をおこすことになり、政治と文学との関係は、一九二〇年代の初期、プロレタリア文学運動の発芽時代に一部の実践家によって云われたような、機械論にまで逆行して行った。 これ・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・素朴な、発芽的な形態においてさえもすくない。却って唐紙に墨で描いたような上司小剣氏の「石合戦」が現われたりしている。これは何故であろうか。或る種の人々はこれまでの作家の怠慢さにその原因を帰するけれども、果してそれだけのことであろうか。社会性・・・ 宮本百合子 「文学の流れ」
・・・ ロシアの民衆の中に蔵されている健康な人間性、大きい才能の強力な発芽として歴史の上に登場した若いゴーリキイが、計らずも当時の情勢に制約され、苦しんだ内的過程の有様は今日の私達をも様々の示唆によってうつものがある。もし、無智と従属とを意味・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ロシアの民衆の中に蔵されている健康な人間性、大きい才能の強力な発芽として歴史の上に登場した若いゴーリキイが、計らずも当時の情勢に制約され、苦しんだ内的過程の有様は、今日の私達をもさまざまの示唆によってうつものがある。もし、無智と屈従とを意味・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・ 今日、私自身が自らの裡に自覚する強みも、弱みも、何処か遠い、見えない彼方に下された胚種の、一つの発芽であると、何うして云えないだろう。 此の一家族を貫く何等かの遺伝の上に、私は此も亦必然的な「日本」と云う祖国の気分を負って居る。・・・ 宮本百合子 「無題」
・・・そこで無視され、卑俗な大人の通念で誤解されたジャックの能動的な精神の発芽が、やがて封じこめられた「少年園」第二巻で経験する苦しみと危機との描写は、現代においても若い精神が教育とか陶冶とかいう名の下に蒙らなければならない戦慄的な桎梏と虚脱とを・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
出典:青空文庫