・・・米国婦人が、不用な奢侈品に良人の体中の油汗を搾らせながら、祈祷の文句を誦し、人道の為に、彼女等が殆ど一人として云わない事はない Humanity の為に是非を喧しくするのが一種の常套であると共に、日本の現代の常套は女性の経済的独立と称し、職・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・しかし文字の上での権利が増大したとしても、自由が与えられたとしても、結婚して一家を持ってゆくだけの収入が若い二人に確保されていない時、住むに家のないとき、親たちの扶養してゆかなければならない義務が、戦死した男の兄弟たちに代って若い妻の肩にか・・・ 宮本百合子 「自覚について」
・・・民主主義の方向が、民主主義文学者に明確に把握されていたならば、そして、新鮮な決意があるならば、ファシズムに抵抗を感じている文学者たちの会合として、一献は不用のものであった。このことについて、当時、病気で出席さえ出来なかったわたしが、ここでふ・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・ 其位なら何故、私は、彼女のそばによって、一つの銀貨と引かえに、不用な画帖を受けとってやらなかったか? 私は、先一度そうした。そして、もう二度とは繰返すまい感銘を受けたのであった。 彼女が、愛嬌に薄い頬につくる微笑が、どんなにその唇・・・ 宮本百合子 「小景」
・・・若し、彼等が親となった時、その子に完全な扶養を与えることが出来ないと云うような場合、如何に若くても、彼等が社会生活に訓練されていると感心することは、斯様な時にも、決して、無思慮な行動に出ないことです。 先ず、男が相当な地位に上るまで、或・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ 何だか彼んだか訳の分らない事を二色の金切声が叫びながら、ドッタンバッタンと云うすさまじさなので、水口で何かして居た女中達は皆足音をしのばせて垣根の隙――生垣だから不要心な位隙だらけになって居る――からのぞくと、これはこれはまあ何と云う・・・ 宮本百合子 「二十三番地」
・・・ 然しそれなら、恒産も無く、老後を扶養して呉れる縁者もない彼女は、今後某々未亡人として、立つべきどんな生活方針を見出してよいかと云う、実際問題になると、考えは荒漠とした処へ迷い込んで仕舞うらしく見えました。亡夫を愛する彼女は、嘗て一度目・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・夫婦の生活で夫が妻を扶養するのは当然の義務だのに、妻たるものがわずかの美衣美食に飼い馴らされて人としての権利さえ自分から捨てている愚を、福沢諭吉は社会全体の進歩というところから痛歎している。「夫婦苦楽を共にするということは努々等閑にさるべき・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・ 結婚の自由と民法がいっても、現実に住居のないこと、月給の少いこと、戦争によって多くの家庭は新しい扶養者をもたざるを得なくなっていることなどで、自由な結婚はなかなか出来ない。全逓の従業員組合は、十数万の結婚適齢従業員のために、結婚資金を・・・ 宮本百合子 「離婚について」
・・・若いサラリーマンの給料は妻を扶養するのもむずかしく思われるほどだのに、ましてその家族の負担などは考えることもできまい。男にも経済的に助けなければならない家族がある場合がむしろ多いであろう。下級勤人ほど、この家庭の経済的羈絆はその肩に重からざ・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫