・・・我輩は我が社会を維持して国を立てんとするに、むしろ無学無術の人と事を共にするも、有智の妖怪と共にするを欲せざる者なり。そもそも我が日本国の独立して既に数千年の社会を維持し、また今後万々歳に伝えんとするは、自ずからその然る所以の元素あるが故な・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・空想は重く、思惟は萎えてただ 只管のアンティシペーションが内へ 内へ肉芽を養う胚乳の溶解のように融け入るのだ。 L、F、H子供らしい真剣で白紙の上に私は貴方の名と自分の名とを書きました。・・・ 宮本百合子 「海辺小曲(一九二三年二月――)」
・・・ まったく思えば日本の封建的尻っぽというものは、妖怪じみて巨大である。なにしろ二十世紀のなかばまで、あれほどの封建的絶対性が社会全般をつつんでいた事実を思えば、日本の「近代」というものは明治以来ヨーロッパでいわれている意味の「近代」でな・・・ 宮本百合子 「自我の足かせ」
出典:青空文庫