・・・するとある日当時の高等学校長、今ではたしか京都の理科大学長をしている久原さんから、ちょっと学校まで来てくれという通知があったので、さっそく出かけてみると、その座に高等師範の校長嘉納治五郎さんと、それに私を周旋してくれた例の先輩がいて、相談は・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・そんならこのレンズの大きさがどれ位あるかまたその中のさまざまの星についてはもう時間ですからこの次の理科の時間にお話します。では今日はその銀河のお祭なのですからみなさんは外へでてよくそらをごらんなさい。ではここまでです。本やノートをおしまいな・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・三十一日わたくしはそこの理科大学の標本をも見せて貰うように途中から手紙をだしてあったのです。わたくしが写真器と背嚢をたくさんもってセンダードの停車場に下りたのは、ちょうど灯がやっとついた所でした。わたくしは大学のすぐ近くのホテルからの客を迎・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・そして算術帳国語帳理科帳とみんな書きつけました。すると鉛筆はまだキッコが手もうごかさないうちにじつに早くじつに立派にそれを書いてしまうのでした。キッコはもう大悦びでそれをにがにがならべて見ていましたがふと算術帳と理科帳と取りちがえて書いたの・・・ 宮沢賢治 「みじかい木ぺん」
・・・専門学校では文科系統の学徒が容しゃなく前線へ送り出され、理科系統のものだけが戦力準備者としてのこされた。何年間も否定されつづけて来た若き生の、肯定と回復の一つの気の如く、不安なつつみどころのない表現として、自然と自意識の問題を語るとき大多数・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・今芳子さんが自分と一緒にいないのは、彼女が当番で、次の理科の時間に使う標本を、先生のお手伝で揃えているからなのです。「芳子さんは親切な好い方よ」と政子さんは云うべきなのだと云う事は解っていましたが、友子さんが、大きな二つの眼で自分を凝と見詰・・・ 宮本百合子 「いとこ同志」
・・・やっと自分が巴里へ行ける番になって、ソルボンヌ大学の理科の貧しい学生となってからのマリヤが、エレヴェータアなどありっこない七階のてっぺんのひどい屋根裏部屋で、時には疲労と空腹とから卒倒するような経験をしながら、物理学と数学との学士号をとる迄・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
・・・国史のようなものがこれ迄より重視されることも意味はあるだろうけれども、数学・理科をより軽く見る傾きが極端になれば、それは過ぎたるは及ばずにもなる。年限の永さが教育の実質の高さを直接に証明するものでないことを常識は知りぬいていると思う。知育偏・・・ 宮本百合子 「国民学校への過程」
・・・はじめ学校全体から理科用電池を盗んだと思われたうすのろの伍助の姿、やがてほんとは松井という少年がそれをとったという事実がはっきりして伍助への同情が学校にひろがって来る過程もリアリスティックにとらえられている。全体が自然に、わざとらしいところ・・・ 宮本百合子 「選評」
・・・政府は、文科系統の学生だけを前線に送った。理科系統は軍需生産に利用できるからのこした。女子の動員についてはどんなに若い女性のロマンティックな英雄心を刺戟しただろう。日本の人民は細長い島の国の上で、全く世界から遮断され、すきなままに追い立てら・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
出典:青空文庫