・・・世の中が真暗くなったような錯覚を起こさせるのがジャーナリズムの狙い所ではあろうが、考えてみるとどこの世界にでも与太者のユーモレスクのない世界はないであろう。そんなものにばかり気を取られていると自分の飯に蠅がたかる。こんな新聞記事をよむ暇があ・・・ 寺田寅彦 「初冬の日記から」
・・・そうなってしまえば、もうジャーナリズム的批評の圏外に出てしまって土に根を下ろしたことになるであろうが、今のジャーナリズムの世界ではそういうことはちょっと困難なように見える。 以上は自分が今日までに感じた随筆難のありのままの記録で、云わば・・・ 寺田寅彦 「随筆難」
・・・ 登山流行時代の今日スポーツの立場から嶮岨をきわめ、未到の地を探り得てジャーナリズムをにぎわしたような場合でも、実は古い昔に名の知れない測量部員が一度はそこらを縦横に歩き回ったあとかもしれない。 上には上がある。測量部員が真に人跡未・・・ 寺田寅彦 「地図をながめて」
・・・現代の新聞のジャーナリズムは幾多の猫又を製造しまた帝都の真中に鬼を躍らせる。新聞の醸成したセンセーショナルな事件は珍しくもない。例えば三原山の火口に人を呼ぶ死神などもみんな新聞の反古の中から生れたものであることは周知のことである。 第三・・・ 寺田寅彦 「徒然草の鑑賞」
・・・ 現代の俳句界はジャーナリズムの力を借りることなしには大衆を包括することができないのに、今のジャーナリズムの露骨主義と連句の暗示芸術というものとは本来別世界の産物である。しかし、現状をはなれて抽象的に考えてみると連句的ジャーナリズムやジ・・・ 寺田寅彦 「俳諧瑣談」
・・・現在のようなジャーナリズム全盛時代ではおそらく大多数のこうした種類の挿画や裏絵は執筆画家の日常の職業意識の下に制作されたものであろうと思うが、あの頃の『ホトトギス』の上記の画家のものはいかにも自分で楽しみながら描いたものだろうという気のする・・・ 寺田寅彦 「明治三十二年頃」
・・・人々はただニイチェの名前だけを、ジャーナリズムのニュースで知つてるだけで、実際には一頁のニイチェも読んでは居なかつたのだ。彼等の中で、比較的忠実に読んだ人さへが、単なる英雄主義者として、反キリストや反道徳の痛快なヒーローとして、単純な感激性・・・ 萩原朔太郎 「ニイチェに就いての雑感」
・・・ ファシズムが、イデオロギーの面でも、左からまわってやってきているという例は、猪木正道氏、渡辺慧氏などという新型のジャーナリズム流行児の出現にも注目されます。 過去十数年にわたってわたしたち日本の人民は、正しい社会科学の本もよめなか・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ したがって、ジャーナリズムにあらわれる程度の転向についてのすべての論議は、第一の問題である日本の天皇制ファッシズムと、戦争強行に裏づけられている治安維持法の批判、それへの反抗はあらわさなかった。その重要な社会的・階級的モメントをとばし・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・一九四八年のなか頃から、国内にたかまってきている民族自立と世界平和と、ファシズムに反対する文化擁護の機運は、決して一部の人の云っているようにジャーナリズムの上の玩具ではない。こんにち、平和を支持し、ファシズムに反対する作家たちの一人一人が、・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
出典:青空文庫