・・・右の手は、重い腹をすべって垂れ下っている粗いスカートを掴むように握っている。「医者のもとで」という題のこのスケッチには不思議に心に迫る力がこもっている。名もない、一人の貧しい、身重の女が全身から滲み出しているものは、生活に苦しんでいる人・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・ 婦人労働者の派手な桃色のスカートが、炎天のキャンプの入口にヒラヒラしている。彼女は日やけした小手をかざして、眩しい耕地の果、麦輸送の「エレバートル」の高塔が白く燦いている方を眺めた。キャンプの車輪の間の日かげへ寝ころがって、休み番の若・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・菩提樹の茂った樹かげに立てたペンキ画の背景の前の椅子で、赤い布をかぶった女が格子縞のスカートの皺をひっぱっている。 並木通り風景を眺めて昼間のベンチにいるのは9/10までいろんな髪と目の色をした女、及び籐の乳母車だった。 ゲルツェン・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・今の社会の風潮が浮薄であるということだけを強調して、その社会的根源を究明しようとする力は持たず、表面的にそのような世相を反撥して地味な制服を着ろとか、家事を見習えとか云い、仏英和女学校などでは女学生のスカートの長さが規定どおりか否かを一々物・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・ 公然と条理をもって、しかも人間的機智と明察をもって、どこまでもユーモラスに、だが誰憚らぬ正気な状態において諷刺文学がありうる処と時代に、スカートの中を下からのぞくようなゲラゲラ笑いが、笑う人間の心を晴やかにするとは思われない。自分たち・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ 折から手のすいていた四五人の労働者に、珍しく更紗のスカートをつけた若い女が一人混って、試掘の行われている場所を見物した。ざっと結った柵の中で、やはりポクポクして崩れ易い周囲の泥に石油の色を滲ませて、透明な油が湧出している。強い風にもか・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・員が恋愛の自由ということを感違いしていろいろの誤謬を起したことにレーニンが非常に心配して、今の若いものは恋愛というものは一つの生理的問題に過ぎないということを非常に誤解して、あんなに有望な青年達が娘のスカートを追っかけて行くようではと非常に・・・ 宮本百合子 「ソヴェトに於ける「恋愛の自由」に就て」
・・・が恋愛の自由ということを感違いして、いろいろの誤謬を起したことにレーニンが非常に心配して、今の若いものは恋愛というものは一つの生理的問題に過ぎないということを非常に誤解して、あんなに有望な青年達が娘のスカートを追っかけてゆくようではと非常に・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・軽い夕飯を食っているのはグリーン色の縞のスカートに膝出したハイランダアである。炉辺にかけて、右手でパン切をかじり、片手の壺は牛乳か麦酒か。炉の前にフイゴが放り出されていて、床は不規則なごろた石をうずめてある。一つ一つ色ちがいなその石の面を飛・・・ 宮本百合子 「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
・・・紺のスカートを勢よくひろげて車座に坐り、熱心に報告をきいたり、歌をうたったり、またはほころびを縫ったりしている婦人車掌たちの様子が、私にはまざまざと見える。今度の整理案ではバスの婦人車掌、月収四十八円のところを、三十八円に減らされることにな・・・ 宮本百合子 「電車の見えない電車通り」
出典:青空文庫