・・・適当なスケールさえ作ればこれは可能になる。たとえばピアノの鍵盤や、オストワルドの色見本は、言わばそういう方向への最初の試歩である。金相学上の顕微鏡写真帳も、そういうスケールを作るための素材の堆積であるとも言われよう、もし、あの複雑な模様を調・・・ 寺田寅彦 「感覚と科学」
・・・試験の成績やメンタルテストで人材登用のスケールをきめようとするのが一つ。経済関係の見地だけから社会制度を決定しようとするのもその一つであろう。 これは考えものである。 寺田寅彦 「猿の顔」
・・・で学ぶべきは、仰云るように、作者の根気、努力、であるが、こちらの作者のスケールと現実洞察の、彼なりの鋭さ、リアリティーは実に光彩陸離たるものがあります。若い時代が、その技術をくみとりつつ、内容に於て新たな世界を芸術化し得るというよろこび、我・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・以後の作品の中にも、いくつかの典型は見出されてゆくであろうが、それらの、多くは市民的スケールであるにすぎない。 権力からはなれて、つましき良心に立っているわたしたちの社会生活の範囲では、バルザック的典型は、つくり出される人物に属し、架空・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・アインシュタイン自身が自分の心持からレーニングラードのアカデミーで働くのなどはいやだというのと、ソ連がもし希望ならばよろこんで、この名誉ある人類的スケールの科学者にふさわしい待遇をした、というのとは、二つの別な態度なのではあるまいか。くどく・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・文学者と世界平和運動というスケールでは、そのことに関する公然たる意志表示や行為を政治的であるとしてさけがちな日本の文学者も、この作品の翻訳に関して侵略して来た告発、思想と言論に対する権力の圧迫には、面をそむけずにたたかって、捏造を拒否しつつ・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・ しぶい色、縞は、昔の日本の室内で近い目の前で見られるにふさわしいのだが、今日の東京の建築物では室内のスケールも変って来ていてその質量感にふさわしいようにという関心が、様々な色のこみすぎた盛り合わせとして現れて、却って色彩的でなくなって・・・ 宮本百合子 「働くために」
・・・けれども、社会主義的リアリズムの世界的なスケールにおける今日の提唱は、決して文学における階級的主張を引こめたものではなく、それとは全く反対に、従前より更に高まった勤労階級の指導力によって、従前より更に広汎に、具体的に、政策的に、文学における・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
出典:青空文庫