・・・ 日本の畳も、特別むずかしいことを知らない私たちにすれば、へりがスフで切れやすいことは困却の一つである。 木綿の生活的な美しさも、日常のなかへ再び嘗ての豊富さでかえって来ることはないだろう。 いろいろそういうところがあって、それ・・・ 宮本百合子 「生活のなかにある美について」
・・・オール・スフ。眼鏡のつるに到る金の申告。体位向上徒歩奨励、幼児保健の問題、戦没者の母子寮の設立などと全く背までくっついていて離れられない双生児の歩む姿である。 風俗の心理というものは、このどちらかの一方にだけ範囲を限ってそれぞれのものが・・・ 宮本百合子 「風俗の感受性」
・・・決して一遍きり、スフみたいに使ったら棄てるなんて命じゃない、繰返し繰返し生きて行かなければなりません。そのためには私どもは立体的に生きるしかありません。立体的に生きるということは、そういう風にして自分の生きた喜び悲しみというものをもう一遍深・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・それに対して、昨今は家庭的な婦人が妻として求められているといえば、文学のことだの人生のことだのということはどうでもいいから、先ずスフの洗濯が上手で南京米をうまく炊いて、やりくりをともかく良人に苦労かけずにやってくれる妻、物価高の生活に耐えて・・・ 宮本百合子 「若い世代の実際性」
・・・婦人達が燃料の欠乏、シャボンその他の洗剤の欠乏、繊維が悪くなって洗えもしないスフの製品が殖えたことなどで、毎日の婦人の仕事が一層困難になって来たと同じ時に、農村の婦人達が田圃で働く木綿着物がなくなった。手拭は足りなくなって来た。肥料・農具も・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫