・・・大正池からそこまで二里に近い道程を山腹に沿うて地中の闇に隧道を掘り、その中を導いて緩かに流して来た水を急転直下させてタービンを動かすのである。この工事を県当局で認可する交換条件として上高地までの自動車道路の完成を会社に課したという噂話を同乗・・・ 寺田寅彦 「雨の上高地」
・・・また陸上では起らぬようなタービンの故障が舶用タービンでしばしば起るのはタービン・ディスクの廻転に船の動揺が作用するためのジャイロスコピック・アクションに起因する盤の振動によるものであろうということに着目して、この不可解の問題を解決した。これ・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・三千四百トン余のタービン船で、なかなか綺麗で堂々としている。青森市の家屋とは著しい対照である。左舷に五秒ごとに閃光を発する平舘燈台を見る。その前方遥かに七秒、十三秒くらいの間隔で光るのは竜飛岬の燈台に相違ない。強い光束が低い雲の底面を撫でて・・・ 寺田寅彦 「札幌まで」
出典:青空文庫