・・・やはり栄えた筆頭は芸者に止めをさすのかと呟いた途端に、私は今宮の十銭芸者の話を聯想したが、同時にその話を教えてくれた「ダイス」のマダムのことも想い出された。「ダイス」は清水町にあったスタンド酒場で、大阪の最初の空襲の時焼けてしまったが、「ダ・・・ 織田作之助 「世相」
・・・という小説は九十何枚かで一応結んだが、あの小説はあれから何拾枚もかきつづけられる作品だった。ダイスのマダムの妹を書こうというところで終ったが、あれは「世相」の中でさまざまな人間のいやらしさを書いて来た作者が、あの妹を見てはじめて清純なものに・・・ 織田作之助 「文学的饒舌」
・・・みでは、まだ人生の希望をすてなかったみんなふり出しでは、健康であった心も、正しかったみんな、中休みではまだ自分のコースを話し合って けれども、自分のダイスがコースをはなれてゆくにつれて、も・・・ 宮本百合子 「ものわかりよさ」
出典:青空文庫