・・・ 六 恋愛以上の高所 恋愛が青春にとって如何に重要な、心ひかれるテーマであるからといって、人生において、恋愛が至上ではない。青春時代において恋愛問題が常に頭をいっぱいに占領してはならない。宇宙と自己、社会共同体と自己・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・には、Xの掲げるスローガンを具体的な主要なテーマとしてたくみに、えん曲に生かしている。こういう問題は、プロレタリア文学において、農民の生活を扱っても、もちろん、どんな困難をおかしても取りあげなければならないものである。小林多喜二の「不在地主・・・ 黒島伝治 「農民文学の問題」
・・・このテーマについては、私はもっともっと書きたく、誘惑せられる。 次々と思い出が蘇える。井伏さんは時々おっしゃる。「人間は、一緒に旅行をすると、その旅の道連れの本性がよくわかる。」 旅は、徒然の姿に似て居ながら、人間の決戦場かも知・・・ 太宰治 「『井伏鱒二選集』後記」
・・・ ふいと、次のような短篇小説のテーマが、思い浮んで来たのである。この小説には、もはや、あの役人は登場しない。もともとあの役人の身の上も、全く私の病中の空想の所産で、実際の見聞で無いのは勿論であるが、次の短篇小説の主人公もまた、私の幻想の・・・ 太宰治 「家庭の幸福」
・・・はないかもしれないが、花を生ける人の潜在意識の中に隠れたテーマがあってこそ一瓶の花が生け上げられるのである。そのテーマを表現すべき「言葉」として花と瓶とが選ばれる。花は剪刀でカットされた後に空間的モンタージュを受ける。この際にたとえば青竹送・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・という一つの大きなテーマが暗示される。この映画や、それからたとえばせんだっての「人生の設計」なども、この大きな問題を考究するときの資料になるべきものであろう。 映画の世界の道徳は人間の世界の道徳とは必ずしも一致しなくてもよい。それは世界・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・という一つのテーマを示唆する暗示ぐらいにはなるかもしれないのである。 もしも自分の以上の空想が多少でもほんとうに近いとすると、若い青年男女に対する映画の生理的効果を研究するのは将来内務省か文部省かのどこかの局ないしは課で取り扱うべきだい・・・ 寺田寅彦 「映画と生理」
・・・第一のテーマは楽譜の形からも暗示されるように、彗星のような光斑がかわるがわるコンマのような軌跡を描いては消える。トリラーの箇所は数条の波線が平行して流れる。 第二のテーマでは鉛直な直線の断片が自身に並行にS字形の軌跡を描いて動く。トリオ・・・ 寺田寅彦 「踊る線条」
・・・弟子がいったい何をしていいか見当のわからない場合に、一つのものになる見込みのあるテーマを授け、それに対する研究進行の径路を指示するのはそうだれにでも容易なことではないのであって、これだけでも一つの仕事の骨格に相当する。そうして得た結果がいっ・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
・・・アマチュア昆虫生態学者にとっては好個のテーマになりはしないかという気がしたのであった。 とんぼがいかにして風の方向を知覚し、いかにしてそれに対して一定の姿勢をとるかということがまた単に生物学者生理学者のみならず、物理学者工学者にまでもい・・・ 寺田寅彦 「三斜晶系」
出典:青空文庫