・・・人の妻となってからは、当時の女庭訓的な思想のために、在来の家庭的な、いわゆるハウスワイフというような型に入ろうと努め、また入りおおせた。しかし性質の根柢にある烈しいものが、間々現われた。若い時には極度に苦しんだり悲しんだりすると、往々卒倒し・・・ 有島武郎 「私の父と母」
・・・鐘が淵紡績の煙突草後に聳え、右に白きは大学のボートハウスなるべし、端艇を乗り出す者二、三。前は桜樹の隧道、花時思いやらる。八重桜多き由なれど花なければ吾には見分け難し。植半の屋根に止れる鳶二羽相対してさながら瓦にて造れるようなるを瓦じゃ鳥じ・・・ 寺田寅彦 「半日ある記」
・・・ そして玄関にはRESTAURANT西洋料理店WILDCAT HOUSE山猫軒という札がでていました。「君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか開けてるんだ。入ろうじゃないか」「おや、こんなとこにおかし・・・ 宮沢賢治 「注文の多い料理店」
・・・――原泉夫妻[自注18]は四谷の大木戸ハウスというアパートで細君はトムさん[自注19]の新協劇団第一回公演では「夜明け前」に巡礼をやり、今やっているゴーゴリの芝居では何をやっているか、旦那さんの方はきっと徹夜して小説かいてるでしょう。今夜見・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ その他に今解っている作品集は “The Man of Property.” “The Country House.” “Fraternity.” “The Dark Flower.” “Five Tales.”・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・丁度今、紐育のメトロポリタン オペラ ハウスで「青い鳥」を上演しているので、余計に心を引かれる。さぞよいだろう。 つい間近に成った民衆座の同じものが、かなりよく出来たというのは悦しい。 Romain Rolland の近作“Co・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・アメリカではいま、家庭の主婦のあいだに、ハウス・ワイフということばをなくそうという希望がおこっています。主婦の仕事は、はっきりした社会労働の一つだという考えがたかまっているわけです。ハウス・ワイフのかわりに、何か社会的勤労にふさわしいよび名・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
出典:青空文庫