・・・またマレイで「コタ」は町。またビルマ語で「コーンダーン」は小さき山脈。和喰 「ワシ」波浪「ケプ」破れる。また「ケ」場所。奴田 「ヌ」頂の平たき山「タプ」円頂丘。日下 「クサハ」河を渡船で渡る。勿論土佐の日下は山地である、人名等よ・・・ 寺田寅彦 「土佐の地名」
・・・マルケサスのプイフ。ビルマのプルエ。ピルウェ。スラヴのフバ。フィンランドのフィル。ラテンのピパ。などみんな擬音らしくもありまた関係があるらしくもある。オボーなどもこれと従兄弟である。 おもしろい事には全然ちがった楽器の名前が同じような音・・・ 寺田寅彦 「日本楽器の名称」
・・・たとえば僕は一千九百十九年の七月に、アメリカのジャイアントアーム会社の依嘱を受けて、紅宝玉を探しにビルマへ行ったがね、やっぱりいつか足は紅宝玉の山へ向く。それからちゃんと見附かって、帰ろうとしてもなかなか足があがらない。つまり僕と宝石には、・・・ 宮沢賢治 「楢ノ木大学士の野宿」
・・・ソヴェト同盟の国境、朝鮮、満州をふくむ中華人民共和国、ビルマ、シャム、マライ、印度支那、フィリピン、とアジアの地図に描かれているどの国々をみても、こんどの戦争で日本の軍隊が侵略しなかった土地はありません。そしてそれらの国の果て果てで、平和な・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・火野葦平が、文芸春秋に書いたビルマの戦線記事の中には、アメリカの空軍を報道員らしく揶揄しながら、日本の陸軍が何十年か前の平面的戦術を継承して兵站線の尾を蜒々と地上にひっぱり、しかもそれに加えて傷病兵の一群をまもり、さらに惨苦の行動を行ってい・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・日本語のできる郁達夫はビルマの辺鄙な村にかくれて戦禍をさけていた。遂にそこへも日本軍が侵入して来た。或る日、往来で土地の住民が虐殺されかかっているのを見て、郁達夫の唇から思わず日本語がほとばしった。土地の住民の命はそのために救われ、郁達夫は・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・日本の軍事行動はシンガポール占領、ビルマ、ジャワ占領と、最も侵略の拡大された時期であった。軍需産業の病的な拡大のために企業整備がはじまり、民間の日常必需品の統制が開始された。前年十月に成立した東條英機内閣はこの時期、彼等にとってもっとも・・・ 宮本百合子 「年譜」
出典:青空文庫