・・・そこから谷底へおりてシャモニの村まで歩きましたが、道ばたの牧場には首へ鈴をつけた牛が放し飼いにしてあって、その鈴の音が非常にメロディアスに聞こえます。また番人の子供やばあさんもほんとうに絵のようで愉快でした。日本にもあるような秋草が咲いてい・・・ 寺田寅彦 「先生への通信」
・・・おのずからなる抒情的でメロディアスな筆致は、わたしの作品の全系列の中にあっても類の少い位置をこの作品に与えている。 風知草は、絵画で云えば、一篇のクロッキーであると云ってさしつかえない。クロッキーはデッサンではない。クロッキーにおいて細・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・第一回目の冒頭にメロディアスな技術で奏ではじめた、わが汚辱をえぐりあばくという文学の身がまえがくずれてしまっています。そうして、第三回目には、第一回目冒頭でかなでられたメロディーが作者の心に甦ってきた。そして自分の書く態度について反省をして・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
出典:青空文庫