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・・・お前の裡には慕しい我北国の田園も日に戦ぐユーカリの葉もある。野に還し、不思議な清澄への我ノスタルジアを癒して呉れるのはお前の見えない心の扉ばかりだ。無限の世界の上にただ ひとひら軽く ふわりと とどま・・・
宮本百合子
「五月の空」
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・・・まだ日はすっかり落ちきれません、窓のわきのユーカリの葉がまっくろい化物の様な影を机の上に落して居ます。詩「アア、おそくなると悪い、すぐ行こう、サゾ待って居らっしゃるだろう」と云ってそのまま庭つづきに出て行きました。手には白いかみとそして・・・
宮本百合子
「無題(一)」