・・・ 笑いながら話して居るのに、どうした事か後では兵隊が恐ろしい顔をして居る事、 抜目のない人同志の話は油断のならないものらしい。 私はわきでそう思って居る。 ルーテルの何代目の孫だとか云う男が、人々の間を游ぎ廻ってしきりに何か・・・ 宮本百合子 「暁光」
・・・小学校の教師と云えば月五ルーブリの月給で実際乞食暮をしていた。 革命後、ソヴェトの単一勤労学校は四年制、七年制、九年制とわかれている。が、校舎の不足、教師予算の不足その他で、就学率は、理想通りには決して行かなかった。八歳でチャンと就学し・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ペルシャの商人までそこに出て来て、何百万ルーブリという取引がある。ニージュニ・ノヴゴロド市の埠頭、嘗てゴーリキーが人足をしたことのある埠頭から、ヴォルガ航行の汽船が出る。母なるヴォルガ河、船唄で世界に知られているこの大河の航行は、実に心地の・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・五十七ルーブリ貰っている。 ――本雇いにして貰えばいいのに。 ――事務所で室女中にしてくれるかもしれないって云ってたが、どうなるか。 ――どこでも今人が足りなくて騒いでるじゃないの、集団農場や国営農場へとられちゃって。職業紹介所・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・・エス劇場 九十二・五カペイキ革命劇場 六十八カペイキ諷刺座 九十六・六カペイキコルシュ劇場 一ルーブル十一カペイキオペラ ・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・『戦争と平和』の絵入本二冊十五ルーブリ。 大学の壁にビラが貼ってある。各劇場の今週間の番組。曲芸師ケファロの横顔―― ほとんど通り過ぎかけて、私は俄に声を出して云った。「園がある、園が」ビラの一つに、「園」という大活字がたしかに見え・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・ ソヴェトの三等夜行列車では、一組一ルーブル前後で敷布団、毛布、枕が借りられるのだ。しかし、若い女は借りない。二人の日本女は革紐を解いて毛布と布団をとり出した。色の黒い方の日本女は毛布と書類入鞄とを先へ投げあげといてから、傍の柱にうちつ・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ 例えばモスクワ芸術座のルージュスキーなんか、役柄は西洋の松助みたいなところだが、革命前、アルバート広場の裏んところへ大きな邸宅をもって暮していた。革命当時一旦邸宅は没収されたらしいが、直ぐ、過去の功績に対して邸宅を与えられた。――す・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・月給六十ルーブリとる工場労働者が十ルーブリで借りていた室を、仮りに今度は百五十ルーブリとる労働者がかりることになったとする。室代は月給が九十ルーブリ増した率で何割か増して高く払うというわけなんだ。 痛快なのは、ソヴェト同盟の生産拡張五ヵ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の解放された生活」
・・・、「ルージン」、「その前夜」、「父と子」、「処女地」等において描こうとしたのであった。 ブランデスは、ツルゲーネフが死んだ年非常に情愛のこもったツルゲーネフの評伝を書いた。その冒頭に「ツルゲーネフはロシアの散文家中最大の芸術家である」と・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
出典:青空文庫