・・・ 俳句とは如何なるものかという問に対して先生の云った言葉のうちに、俳句はレトリックのエッセンスであるという意味の事を云われた事がある。そういう意味での俳句で鍛え上げた先生の文章が元来力強く美しい上に更に力強く美しくなったのも当然であろう・・・ 寺田寅彦 「夏目先生の俳句と漢詩」
・・・「俳句はレトリックの煎じ詰めたものである。」「扇のかなめのような集注点を指摘し描写して、それから放散する連想の世界を暗示するものである。」「花が散って雪のようだといったような常套な描写を月並みという。」「秋風や白木の弓につる張らんといったよ・・・ 寺田寅彦 「夏目漱石先生の追憶」
・・・氏が、尾崎、榊山氏のルポルタージュに自己感傷の過度を批難しながら、林房雄氏のレトリックに触れないことは読者にとっては不思議のようである。「太陽のない街」を実例として、ルポルタージュと記録小説との、芸術化の時間的過程の相異を明らかにしようとし・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
・・・すべてレトリック、すべて外形的。彼の情熱は緩き音楽の調子によって動き、角々のきまりとなり、永く引き伸ばしたことばに終わる。この劇的雄弁術を演技だと考えていた吾人は、デュウゼが新しい考え方と演じ方とをもって出現するに及び革命に逢着した。デュウ・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
出典:青空文庫