・・・ この文芸復興の叫びには、プロレタリア文学の仕事に当時従っていた人々の中から呼応するものが現れたのみならず、ブルジョア文壇の数年来沈滞していた空気にも一味新鮮な刺戟を与えたように見えた。文芸復興は当時にあっては素朴な形で言われた。小説家・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・と漫談、とりとめなくエロティックな流行歌とが異常な流行を見た時であった。文学における「嗚呼いやなことだ」と一味通じて更にそれを、封建時代の日本ユーモア文学の特徴である我から我頭を叩いて人々の笑いものとするチャリの感情に絡んだ気分のあらわれで・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・贅沢をして暮すことなんかできない人々は、日頃贅沢をしてそれが自分たち人種の優越のしるしででもあるかのように振舞っていた人々が今度の禁止で、バカ贅沢ができなくなったことに一味の清涼を感じたのであった。 若い女のひと、まじめに働いている若い・・・ 宮本百合子 「その先の問題」
・・・そして、そのような十年ばかりの間に、古い昔のおだやかな友情にも、一味新たな内容が加えられて、どこやらゆたかに咲きかえった有様であることも、まことに興味ふかい。 それに私は、境遇の関係からきっとよけい友だちを大切に感じるところもあるのだろ・・・ 宮本百合子 「なつかしい仲間」
・・・その頃非合法におかれていた共産党の中央委員のなかに、大泉兼蔵、小畑某というスパイをいれ、大森のギャング事件、川崎の暴力メーデーと、大衆から人民の党を嫌わせるような事件を挑発させたのも、安倍源基とその一味でした。スパイは、日本全国の党組織に入・・・ 宮本百合子 「ファシズムは生きている」
・・・しめじ茸に至れば清純な上に一味の神秘感を湛えているように見える。子供心にもこういうふうな感じの区別が実際あったのである。特にこれらの茸と毒茸との区別は顕著に感ぜられた。赤茸のような鮮やかな赤色でもかつて美しさを印象したことはない。それは気味・・・ 和辻哲郎 「茸狩り」
・・・私は彼と彼の一味との浅薄な醜さを快げに見おろした。そうして彼の永い間の努力と苦心と功績とを一切看過した。私はそこに自分の愛の狭さを感じる。この種の心持ちがしばしば他人の製作に対して起こっているのではないかと、自分を憂えないではいられない。愛・・・ 和辻哲郎 「転向」
・・・能面が一般に一味の気味悪さを湛えているのはかかる否定性にもとづくのである。一見してふくよかに見える面でも、その開いた眼を隠してながめると、その肉づけは著しく死相に接近する。 といって、自分は顔面の筋肉の生動した能面がないというのではない・・・ 和辻哲郎 「能面の様式」
出典:青空文庫