・・・その後アインスタイン一派は光の波状伝播を疑った。また現今の相対原理ではエーテルの存在を無意味にしてしまったようである。それで光と称する感覚は依然として存する間に光の本体に関しては今日に到るもなんらの確かな事は知られぬのである。それにも関らず・・・ 寺田寅彦 「物質とエネルギー」
・・・ 近年プランクなどは従来勢力のあったマッハ一派の感覚即実在論に反対して、科学上の実在は人間の作った便宜的相対的のものでなくもっと絶対的な「方則」の系統から成立した実在であると考え、いわゆる世界像の統一という事を論じている。しかし退いて考・・・ 寺田寅彦 「物理学と感覚」
・・・によると、アラビアのムタカリムンと称する一派の学者は時を連続的と考えないで、個々不連続な時点の列と考えている。しかしてやはり人間感覚に限界のあるという事で、この説の見かけ上の不都合を弁護しているそうである。これも注意すべき事である。 R・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・由来この種の雅致は或一派の愛国主義者をして断言せしむれば、日本人独特固有の趣味とまで解釈されている位で、室内装飾の一例を以てしても、床柱には必ず皮のついたままの天然木を用いたり花を活けるに切り放した青竹の筒を以てするなどは、なるほど Roc・・・ 永井荷風 「妾宅」
・・・今日では誰も知っている彼の Meudon の佳景を発見したのは自然を写生するために古典の形式を破棄した Franais 一派の画工である。それからずっと上流の Mantes までを探ったのは Daubigny である。今まではその地名さえも・・・ 永井荷風 「夏の町」
・・・しかしながら文学美術工芸よりして日常一般の風俗流行に至るまで、新しき時代が促しつくらしめる凡てのものが過去に比較して劣るとも優っておらぬかぎり、われわれは丁度かの沈滞せる英国の画界を覚醒したロセッチ一派の如く、理想の目標を遠い過去に求める必・・・ 永井荷風 「霊廟」
・・・すべて狸一派のやり口は今日開業医の用いておりやす催眠術でげして、昔からこの手でだいぶ大方の諸君子をごまかしたものでげす。西洋の狸から直伝に輸入致した術を催眠法とか唱え、これを応用する連中を先生などと崇めるのは全く西洋心酔の結果で拙などはひそ・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
・・・これは今までの作物に飽き足らぬか、もしくは、おれはおれだから是非一派を立てて見せると自己の特色に自信をおくか、または世間の注意を惹くには何か異様な武者ぶりを見せないと効力が少ないとか、いろいろの動機から起るだろうが、要するに模擬者でもなけれ・・・ 夏目漱石 「文壇の趨勢」
・・・しかし私は右の如く科学と哲学との相違を明にすべきを主張するものではあるが、一派の学者の如く単に両者を無関係的に考えるものではない。哲学は科学を尊重し、科学を材料とするとともに、科学は哲学に基礎附けられねばならない。ガリレイをば根柢なしに建て・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・そもそも歌の腐敗は『古今集』に始まり足利時代に至ってその極点に達したるを、真淵ら一派古学を闢き『万葉』を解きようやく一縷の生命を繋ぎ得たり。されど真淵一派は『万葉』を解きて『万葉』を解かず、口には『万葉』をたたえながらおのが歌は『古今』以下・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
出典:青空文庫