・・・この彦太楼尾張屋の主人というは藐庵や文楼の系統を引いた当時の廓中第一の愚慢大人で、白無垢を着て御前と呼ばせたほどの豪奢を極め、万年青の名品を五百鉢から持っていた物数寄であった。ピヤノを買ったのも音楽好きよりは珍らし物好きの愚慢病であった。が・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・くうた事のないのは杉の実と万年青の実位である。〔『ホトトギス』第四巻第六号 明治34・3・20 一〕○覆盆子を食いし事 明治廿四年六月の事であった。学校の試験も切迫して来るのでいよいよ脳が悪くなった。これでは試験も受けられぬというの・・・ 正岡子規 「くだもの」
・・・一つは丸い小い葉で、一つは万年青のような広い長い葉で、今一つは蘭のような狭い長い葉が垂れて居る。ようよう床屋の前まで来たのであった。また曲った道をいくつも曲って、とうとう内へ帰りついて蒲団の上へ這い上った。燈炉を燃やして室は煖めてある。湯婆・・・ 正岡子規 「熊手と提灯」
出典:青空文庫