・・・ 天が与えた才能からいうと桂は中位の人たるにすぎない。学校における成績も中等で、同級生のうち、彼よりも優れた少年はいくらもいた。また彼はかなりの腕白者で、僕らといっしょにずいぶん荒れたものである。それで学校においても郷党にあっても、とく・・・ 国木田独歩 「非凡なる凡人」
・・・乗ってる者は、三十余りか四十にも近い位の、かっぷくの善い、堅帽を被った男で、中位な熊手を持って居る。大方かなりな商家の若旦那であろう。四十近くでは若旦那でもない訳だが、それは六十に余る達者な親父があって、その親父がまた慾ばりきったごうつくば・・・ 正岡子規 「熊手と提灯」
・・・然し、私が此から観て行こうとするのは、一般でございます。中位の一群でございます。私が故国の女性を思うと同じ一般の女性を語ろうとするのでございます。 第一、米国婦人の一般が、優秀な健康の所有者であると云う事は、何を以て否定する事も出来ない・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ けれども、多数を占めている中位の青年男女は、結婚の問題が起った時、果して自分等は自立して、一箇の家庭を営み得るか否かと云うことを考えずにはいないのです。幸、女子が何か職業を持ってい、その収入と合わせれば、優に二人の生活は保障されると云・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ 今まであんまり口数をきかなかった中位の妓が云い出した。「そうですとも……もとからすきだったのが御うたきいたんで倍も倍もすきになったんです、どうして心配なの? すきだって何にも悪かないでしょう……」こんな事を平気なかおして私は云いのけた・・・ 宮本百合子 「ひな勇はん」
出典:青空文庫