・・・その相伴うや、相共に親愛し、相共に尊敬し、互いに助け、助けられ、二人あたかも一身同体にして、その間に少しも私の意を挟むべからず。即ち男女居を同じうするための要用にして、これを夫婦の徳義という。もしも然らずして、相互いに疎んじ相互いに怨んでそ・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・それが破綻であるか、或いは互いに一層深まり落付き信じ合った愛の団欒か、互いの性格と運とによりましょが、いずれにせよ、行きつくところまで行きついてそこに新たな境地を開かせる本質が恋愛につきものなのです。 自然は、人間の恋愛を唯だ男性と・・・ 宮本百合子 「愛は神秘な修道場」
・・・云ってみれば、お互いがお互いから切りはなして考えたことは、それが健全なよりよい方向であってさえも、結婚生活の現実の中に実を結んでゆく善き花となって咲き出さない場合さえ多いのである。 しかも、一人の若い男、一人の若い女という単純そうな姿の・・・ 宮本百合子 「家庭創造の情熱」
・・・ 民主戦線ではその広さと、そこに包括される社会活動の部面が多様であるにかかわらず、他の一面ではこれまで社会各層がもたなかった互いの共通語をもつようになってきている。労働者階級のファシズム反対という声と、学者たちが学問の自由のために叫ぶフ・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・仲間としての友愛、友達としての友情、同志としての結合、そういう社会的な結び合いの中にある純潔さは、男と女の自然な特殊性を十分に主張しながらも、それを貫いてもう一つ互いの間に持たれている共通な目的によって結ばれている。具体的な例でいえば、ここ・・・ 宮本百合子 「社会生活の純潔性」
・・・買いだめ出来ないということから益々お互いに気はずかしいような手段がとられて行ったのであると思える。 商人の公正な商売道徳が新しく立てられなければならないことが云われて、それはそのとおりなのだけれど、それだけ一方的に、モラルの面から強調さ・・・ 宮本百合子 「主婦意識の転換」
・・・ 女と男とがお互いに交渉を持ってましなものにして行こうとするものとして、経済問題が出て来る。女の人の負うべき努力の部分というのは、その中で多くの部分が予定されているのです。今日の実際の恋愛という風なものは、そう云うものだと思う。その点を・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
・・・家族関係というふうのものも近代の意味では確立していなかったから、互いにとって親族的な縦横の関係は無視されていた。いいかえれば、母、姉、妹の関係が明瞭でなくて、そこには若さの差別のある女が存在したばかりだったし、それらの女にとって父、兄、弟と・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・ 尚子と藍子はそれから愉快げに種々互いの仕事や勉強について話した。「そう云えば、貴女感心に愛素つかさずやっているわね、どうしていて? この頃、あの先生」 尾世川は尚子の遠縁に当る人で、彼女の紹介で藍子は知ったのであった。「―・・・ 宮本百合子 「帆」
・・・憐れな二人は最後には死ぬことで、この世で実現されなかった互いの結合を全くしようとしているのである。 近松は、文学者として女主人公達と共に、その生き方の限界に自分を止めた。近松には、主人公達の苦悩と死に方とを、もう一歩生きる方へと導いて行・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫