・・・同情する自分と同情される他者との矛盾が、死ぬか生きるかの境まで来ると、そろそろ本体を暴露して来はしないか。まず多くの場合に自分が生きる。よっぽど濃密の関係で自分と他者と転倒しているくらいの場合に、いわば病的に自分が死ぬる。または極局身後の不・・・ 島村抱月 「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」
・・・然れども余は他の方面より、余の此事あるが為に老年の両親を苦しましめ、朋友に苦慮を増さしむるを思へば、自己一身の為に他者を損ふの苦痛をなすに堪へず。遂に彼女に送るに絶交の書を以てせり。されども余の素願は、固より彼女の内部に潜める才能を認め、願・・・ 宮本百合子 「「或る女」についてのノート」
出典:青空文庫