・・・ いつなおると云うあてもない病人にかかる金の予算はもとより立たないけれ共、月に一週間の入院料、前後のこまこました物入り、薬代などのために、月二十円は余分に入るとお金は云った。 栄蔵は、身内の事だからそうそう角だった事を云わずに、嫁だ・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・ はじめはたった十六ルーブリの月給で、それから十九ルーブリに、一九二七年にはコンムーナの生産経済の成長とともにやっと三十二ルーブリの月給を貰うようになったトポーロフが、何を目当てに余分な精力をつかい、八年間も、冬の夜、夏の夜を農民のため・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 栗林さんの支払いは受取りがあって、こちらで少し余分に払ったものだから、お釣りを切手で寄越してくれました。 富雄さんへの本は新書を三四冊みつけます。新しいのは中々手に入りませんから、手許にあるのを。大抵『アラビアのロレンス』『今日の・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 又一寸行くと、 ――余分な切符もってませんか? 巴里コンミューンの記念祭の夜、ルイコフの名によるクラブへ行ったときも、クラブの入口にいくたりも主に青年がかたまって、来る者ごとに訊いていた。特別な催しがあるときモスクワのクラブで・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・があってはならないわけであるけれども、いつしか文学を職業とする方へ主軸が傾きがちで、職業的労作の単純化、統一化、能率化のためには、真の文学精神が回避出来ない筈の両性の波瀾をも、わが家の中では御免という余分に馴らされる点がなくはならないのだと・・・ 宮本百合子 「職業のふしぎ」
・・・裾模様のお金を出せば一つ位余分な卓子まで出来るわ。私はその方がいいな」と云った。「そりゃあ、お前の欲しいものなら、どっちでもいいが。阿母さんも、裾模様がよかろうと云って居たから、……一遍相談したらよかろう」「そうね」「そうす・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・物がふえなければ日本銀行券が二倍になっても三倍になっても、余分なものがかえるわけではない」 まず和田長官の「ほしいもの」という目安が知りたい。チリ紙、シャボン、マッチ、脱脂綿、ノート一冊からはじまる学用品のあれこれ、みんななくてはならな・・・ 宮本百合子 「ほうき一本」
・・・けれども、それかと云って、此那ひどい処で我慢し、余分な疲労をさせては居られない。 Aは、学校の門衛の巡査に心当りを注意して貰うことを頼んだ。自分は毎朝、食後、時事新報の広告欄を見る。時には、「嫁入度」などと云う活字の下を、驚と、好奇心と・・・ 宮本百合子 「又、家」
・・・日本女は、芝居におくれないために、余分な一ルーブルは出そうとしなかった。その上警察へ行く気でいる。――では、芝居へ行くだろうと思ったのは間違いだったか? 御者は黙って、ひたすら馬をのろく御すことに努めている。自分の根気と小さい外国女の根・・・ 宮本百合子 「モスクワの辻馬車」
・・・それは、学生委員会であろうが、昨夜のような集会であろうが自分が鼻をつっこめるだけの場所で、誰か一寸余分に拍手された話し手があると、きっと次の日は一日それにくっついて歩くのだ。 イワンは、下らないことを喋りゃしない。今もターニャにアメリカ・・・ 宮本百合子 「ワーニカとターニャ」
出典:青空文庫