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・・・ 本堂正面の階に、斜めに腰掛けて六部一人、頭より高く笈をさし置きて、寺より出せしなるべし。その廚の方には人の気勢だになきを、日の色白く、梁の黒き中に、渠ただ一人渋茶のみて、打憩ろうていたりけり。 その、もの静に、謹みたる状して俯向く・・・
泉鏡花
「一景話題」
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・・・「何だい。一部だの二部だのッていうのは。何かちがう処があるのか。」「同じさ。だけれどそういうのよ。改正道路の向へ行くと四部も五部もあるよ。」「六部も七部もあるのか。」「そんなにはない。」「昼間は何をしている。」「四時・・・
永井荷風
「寺じまの記」