・・・無論マクベスの発端のように行数は短かくても、興味の上において全篇を貫く重みのあるものは論外であるが、平々凡々たるしかも十行内外の一段を設けるのは、話しの続きをあらわすためやむをえず挿入したのだと見え透くように思われる。換言すれば彼の戯曲のあ・・・ 夏目漱石 「作物の批評」
・・・ もしこの二種類の競争すなわち圏の内外に互に競争が同時に起るとすると、向後吾人の受くる作物は、この両個の刺激からして、在来のはますます在来の方向で深く発達したもの、新興のは新興の領分で出来得る限りを開拓して変化を添えるようなものになる。・・・ 夏目漱石 「文壇の趨勢」
・・・そこに真に実在即当為、当為即実在である、内外一如的であるのである。 デカルトが神の存在証明について、「第三省察」においていった如き神と自己との関係は、個が全を表現することが全の自己表現となることであり、全一と個多との矛盾的自己同一的に事・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・までもなきことなれども、幼少の時より国字の手習、文章手紙の稽古は勿論、其外一切の教育法を文明日進の方針に仕向けて、物理、地理、歴史等の大概を学び、又家の事情の許す限りは外国の語学をも勉強して、一通りは内外の時勢に通じ、学者の談話を聞ても其意・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・余輩は、その内外を問わず、その人の身分にかかわらず、一般にこれを日本国中一流の人民とみなしてこれを論ぜんと欲するなり。 政談の中に漸進論と急進論なるものあれども、あまり分明なる区別にも非ず。いずれにも進の義は免かれず。ただ、その進の方法・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・それはこうだ――何でも露国との間に、かの樺太千島交換事件という奴が起って、だいぶ世間がやかましくなってから後、『内外交際新誌』なんてのでは、盛んに敵愾心を鼓吹する。従って世間の輿論は沸騰するという時代があった。すると、私がずっと子供の時分か・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
・・・諸君、吾人は内外多数の迫害に耐えて、今日迄ビジテリアン同情派の主張を維持して来た。然もこれ未だ社会的に無力なる、各個人個人に於てである。然るに今日は既にビジテリアン同情派の堅き結束を見、その光輝ある八面体の結晶とも云うべきビジテリアン大祭を・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・あるときはちりぢりとなって、あるときは獄の内外に、あるときは一つ屋根の下に、それぞれの活動に応じ千変万化の必要な形をとりつつ階級の歴史とともにその幸福の可能性をも増大させつつ進んでゆく一貫性は、もはや単に希望されているところの理想に止っては・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・その記念日にあたって、わたしたちが力をつくして闘い、抵抗しなければならないのが国の内外にあらわになって来ているファシズムであり、戦争挑発であるということは、実に感慨無量のことです。 日本のファシズムは、本年に入ってから、特に国鉄をはじめ・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
同郷人の懇親会があると云うので、久し振りに柳橋の亀清に往った。 暑い日の夕方である。門から玄関までの間に敷き詰めた御影石の上には、一面の打水がしてあって、門の内外には人力車がもうきっしり置き列べてある。車夫は白い肌衣一・・・ 森鴎外 「余興」
出典:青空文庫