・・・その時分緑雨は『国会新聞』の客員という資格で、村山の秘書というような関係であったらしく、『国会新聞』の機微に通じていて、編輯部内の内情やら村山の人物、新聞の経営方針などを来る度毎に精しく話して聞かせた。こっちから訊きもしないのに何故こんな内・・・ 内田魯庵 「斎藤緑雨」
・・・いくら手を叩いたって仕方がない、ごまかされるのです。内情を御話すれば博士の研究の多くは針の先きで井戸を掘るような仕事をするのです。深いことは深い。掘抜きだから深いことは深いが、いかんせん面積が非常に狭い。それを世間ではすべての方面に深い研究・・・ 夏目漱石 「道楽と職業」
・・・ また、血気の輩が、ただ社会の騒動を企望して変を好み、自己の利益をもかえりみずして妄に殺伐をこととするは、平安の主義にもとるが如くなれども、つまびらかにその内情を察すれば、必ず名利のためより外ならざるを発明すべし。名利とは何ぞや。他なし・・・ 福沢諭吉 「教育の目的」
・・・ ゴーゴリ的会の内情主事 古知事知事の年俸五千円今はあっちこっちで七千円近くとる、竹内 女房子は故郷に置き下田の男妾、実践を見当にして居る。授産所の村井ともう一人の女を関係して居る。そのことを、男・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
・・・ その後、しばらくして各大学における運動部の内情が、具体的に描き出された雑誌記事があった。私立大のスポーツ・ボスが従来どんなにチームをくって来たか。そのために選手たちのスポーツマン・シップは危機にさらされがちであること、及び、各大学の運・・・ 宮本百合子 「ボン・ボヤージ!」
・・・ 母は役人生活の内情や、実業家と言われる人の家庭生活を――派手に暮した伯父の生活の観察からいろいろ批判していたらしく、結局技術だけで食うには困らずにやってゆけるという程度の父のところへ来ることに決めたらしい様子です。このことは私が十五、・・・ 宮本百合子 「わが母をおもう」
・・・そこで佐野さんは、内情を知らない親達が、住職の難癖を附けずに出家を止めるのを聞いて、げにもと思うらしいのに勢を得て、お蝶より先きに東京に出て、或る私立学校に這入った。お蝶が東京に出たのは、佐野さんの跡を慕って来たのであった。 佐野さんは・・・ 森鴎外 「心中」
・・・丁度親友の内情を人に打ち明けたくないのと、同じような関係らしく見えた。 そこで己は外の方角から、エルリングの事を探知しようとした。 己はその後中庭や畠で、エルリングが色々の為事をするのを見た。薪を割っている事もある。花壇を掘り返して・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
出典:青空文庫