・・・どんな慙愧の念をもって、昨年十月初旬、治維法の撤廃された事実を見、初めて公表された日本支配権力の兇暴に面をうたれたことだろう。 民主的な社会生活の根本には、人権の尊重という基底が横わっている。人権尊重ということは、正当な思想を抑圧して小・・・ 宮本百合子 「今日の生命」
・・・わたしはその兇暴な波にもまれながら、自分が今日そのような力に抵抗する一人の作家として存在するという必然について、深く思いめぐらさずにはいられなかった。自分が日本の作家であればこそ、その日本の非人間的な権力の行動に追随してはならないということ・・・ 宮本百合子 「作者のことば(『現代日本文学選集』第八巻)」
・・・日本のプロレタリア文学運動が兇暴な嵐に吹きちらされた一九三二年以来、当時、未熟なら未熟なりの誠実さで論じられていた諸課題が、討論されている最中であったその姿のままで、ちりぢりばらばらに今日文学のあちらこちらに存在している。文学における世界観・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
このごろの強盗殺人の特色は、件数が多いばかりでなく、事件の性質が戦争以前とまったくちがっていると思う。それは方法が非常に兇暴になっていることである。人を殺してまで物をとるということは、私達の常識では物とりの極限であった。シ・・・ 宮本百合子 「戦争でこわされた人間性」
・・・プロレタリア文学の伝承を忌避したがる一部の人々があるが今日力をつくして拒否すべきものは、文学運動までをああいう目にあわせた兇暴な治安維持法の変形した再登場である。わたしたちが人間として自然にもつ恐怖を主張し、その原因たる悪権力を克服しようと・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学の存在」
・・・帝国主義戦争強行のため、日本の封建的専制支配が革命運動に対して、今日ほど兇暴であったことはない。失業、農村の飢餓に苦しむ大衆の革命力の深刻な高揚とそれに対する支配階級の恐怖は、プロレタリア文化団体に対してのうちつづく暴圧、白テロにまざまざと・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・すなわち、警官隊の野蛮な襲撃や、検挙された学生が数百名にのぼることを、さも日本の学生が兇暴なものになってしまいでもしたように世界を偽瞞するための宣伝に使用しています。 われわれを、こんにち、心からいきどおらせているのは、権力機関のす・・・ 宮本百合子 「若き僚友に」
・・・平和に対する世界の努力を、暴力的に破壊させる切掛を合図し合うための同盟を結んだ三国は、西に東に兇暴な力を揮い始めた。そしてヨーロッパが戦禍に陥った機会に乗じ、日本は更に手を伸ばして真珠湾、南洋諸島、東亜諸国に侵略を始めた。 人が重い病気・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫