・・・それには友だちの一人と十五円ずつも出し合い、三十円ばかりの家を郊外のほうに借りて、自炊生活を始めたいと言い出した。敷金だけでも六十円はかかる。最初その相談が三郎からあった時に、私にはそれがお伽噺のようにしか思われなかった。 私は言った。・・・ 島崎藤村 「分配」
・・・ごたごたが起ったとやらで、社は解散になり、夫はたちまち失業者という事になりましたが、しかし、永年雑誌社に勤めて、その方面で知合いのお方たちがたくさんございますので、そのうちの有力らしいお方たちと資本を出し合い、あたらしく出版社を起して、二、・・・ 太宰治 「おさん」
・・・そこで皆んなが智慧を出し合い、その中に賢い子供がいて、一つの手段を発見する、例えばあそこに大きい板と棒や何かがあるからそれで筏をこしらえて渡ろうということを提議する。そうするとその子供の智慧も立派に個人的な発見として集団の中に役立つ。それで・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
出典:青空文庫