・・・画面連続の時間的分配を少しでも誤れば効果は全然別のものになるであろうと思われる。要するに「かん」だけの問題である。 ナンセンスの中にのみほんとうの真実が存するという人がある。このナンセンス映画の中にもパリ人というものの真実な描写が多少の・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・神経中枢のどこか前とはちがった部分のちがった活動がスタートを切って、今までとはまた少しちがった場所にちがった化学作用が起こり始め、そうしてまた前とはちがった化学物質が生成されたり、ちがったイオン濃度の分配が設定されたりする。それが今までに残・・・ 寺田寅彦 「映画と生理」
・・・それがために、塵は光の進行を妨げると同時にそれを他の方面に分配する役目をする。塵を含んだ空気を隔てて遠方の景色を見る時に、遠いものほどその物から来る光が減少して、その代りに途中の塵から散らされて来る空の光の割合が多くなるから、目的物がぼんや・・・ 寺田寅彦 「塵埃と光」
・・・ 器械から出る音のエネルギーがいたずらに空中に飛散して銭を払わない往来の人に聞こえる事のないように、銭を払った花客だけによく聞こえるために幾対かのゴム管で分配されるようになっていた。耳にさした管を両手でおさえて首をたれて熱心に聞いている・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
・・・ それでもしこのような片寄りがちの運転状況を避けて、もう少し均等な分配を得たいというならば、そのために採るべき方法は理論上からは簡単である。第一には電車の車掌なり監督なりが、定員の励行を強行する事も必要であるが、それよりも、乗客自身が、・・・ 寺田寅彦 「電車の混雑について」
・・・こういうものは全国にただ一つあって、各地には適当に支局を分配して、中央を通じて相連絡すればよい。 政治経済教育宗教学芸産業軍事その他ありとあらゆる方面にわたる現実の正確な知識を与え、一般の輿望に基づいて各当局の手の回らぬところを研究し補・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・でも一首の頭からおわりまでいろいろの位置に分配されているのに気がつく。この場合では、一つの場所の光景をいろいろな角度に見たスケッチを総合したような形式になっている。 その次に引用された十首は春秋の草花に対して自分の病の悲しみを詠じたもの・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・富の分配の不平等に社会の欠陥を見て、生産機関の公有を主張した、社会主義が何が恐い? 世界のどこにでもある。しかるに狭量神経質の政府は、ひどく気にさえ出して、ことに社会主義者が日露戦争に非戦論を唱うるとにわかに圧迫を強くし、足尾騒動から赤旗事・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・ 作物の現状と文士の窮状とは既に上説の如くであって、ここに保護のために使用すべき金が若干でもあるとすれば、それを分配すべき比較的無難な方法はただ一つあるだけである。余は毎月刊行の雑誌に掲載される凡ての小説とはいわないつもりであるが、その・・・ 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
・・・甚だしきは骨肉相争い、親戚陰に謀り、家名の相続、財産の分配等、争論百出、所謂御家騒動の大波瀾を生じて人に笑わるゝの事例さえなきに非ず。而して其不和争擾の衝に当る者は其時の未亡人即ち今日の内君にして、禍源は一男子の悪徳に由来すること明々白々な・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
出典:青空文庫